中国では製造業の景況感の悪化が続いている。5月4日に発表された2023年4月の財新中国製造業購買担当者指数(製造業PMI)は49.5と、前月(50.0)より0.5ポイント低下。好不況の判断の目安である50を3カ月ぶりに割り込んだ。
4月の製造業の事業活動を見ると、供給側の指標である生産指数は拡大基調と縮小基調のボーダーラインを依然上回っているものの、過去3カ月間の最低水準に落ち込んだ。調査対象企業の一部からは、「顧客からの受注量が期待したほど伸びず、増産ペースを抑えている」との声が寄せられた。
需要側の指標である新規受注指数はボーダーラインを下抜けし、3カ月ぶりに縮小基調に転じた。なかでも中国国内の顧客の購買量が減少していることが、指数を押し下げた。
外需の指標である新規輸出注文指数は、反対にボーダーラインを上抜けして拡大基調圏に浮上した。とはいえ指数の上昇幅はさほど大きくない。調査対象企業によれば、ゼロコロナ政策の緩和を経て輸出ビジネスを拡大できる事業環境が整った一方、実際の受注は「グローバル経済の低迷が重石となり伸び悩んでいる」という。
デフレの兆候に警戒必要
企業の景況感の悪化を受けて、製造業の雇用は冷え込みが強まっている。4月の雇用指数は過去3カ月間の最低値を記録した。調査対象企業の多くが離職者の後釜の採用を減らしているほか、一部からは「経営コスト抑制のために人員カットに踏み切った」との回答も寄せられた。
注目すべきなのは、長らくインフレ基調が続いていた製造業の仕入れ価格や販売価格に転換のシグナルが表れたことだ。仕入れ価格の指標である購買価格指数と販売価格の指標である工場出荷価格指数は、前者は2016年2月、後者は同年1月以降の最低値に落ち込み、そろってボーダーラインを割り込んだ。
購買価格指数の低下は、原材料価格やエネルギー価格の値下がりの影響が大きい。工場出荷価格指数の低下は需要の不振を反映しており、製造業の多くが(受注獲得のために)製品を値下げしている実態を示唆している。
「製造業の景況感の悪化は、中国経済の回復基盤の脆弱さの表れだ。(ゼロコロナ政策緩和後の)需要の急拡大は短命に終わり、景気回復の持続に黄信号が灯った。購買価格指数と工場出荷価格指数の急低下が示すデフレの兆候に、十分に警戒する必要がある」。財新グループのシンクタンクCEBMのシニアエコノミストを務める王喆氏は、そうコメントした。
(財新記者:範浅蝉)
※原文の配信は5月4日
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