半導体の受託製造(ファウンドリー)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は4月20日、2023年1~3月期の決算を発表した。同四半期の売上高は前年同期比3.6%増の5086億3000万台湾ドル(約2兆2387億円)、純利益は同2.1%増の2069億9000万台湾ドル(約9111億円)にとどまり、成長鈍化が鮮明になった。
だが、それ以上に市場関係者の注目を集めたのは、同社の魏哲家総裁(社長に相当)が決算説明会で、2023年の通期売上高について「ドル建てで前年比1桁台前半から半ばの減収を見込んでいる」と明かしたことだ。
仮にTSMCの予想通りなら、通期売上高が2009年以降で初の減収に転じることになる。半導体業界のリーディング企業である同社の厳しい現状認識を受け、市場では「半導体市況の下降局面は想定を超えて深まる」との見方が強まっている。
魏氏は減収予想の背景について、顧客が抱える在庫の消化が大幅に遅れている実態を挙げ、次のように述べた。
「2022年10〜12月期に(TSMCの大口顧客で、自社工場を持たない)ファブレス半導体メーカーの在庫が想定を超えて膨らんだ。さらに、中国市場における(スマートフォンやパソコンなどの)端末の需要回復に予想より時間がかかっている。顧客の在庫が正常な水準に戻るのに、2023年7〜9月期までかかるかもしれない」
3nmの生産ラインはフル稼働
TSMCの製品分野別の売上比率を見ると、1~3月期はサーバーや人工知能(AI)向けなどの高性能コンピューティング(HPC)が全体の44%、スマートフォンが34%、(あらゆるモノをネットにつなぐ)IoTが9%、車載用が7%を占めた。そのうち、HPCの売上高は直前の2022年10〜12月期より14%減少、スマートフォンは同27%減少した。
製造技術の世代別では、最先端の5nm(ナノメートル)プロセスが売上高の31%、7nmが同20%を占め、両者で全体の半分超を稼ぎ出した。旧世代の16nmプロセスの売上比率は13%、28nmは同12%だった。
なお、TSMCが2022年12月に量産を始めた3nmプロセスの現状について、魏氏は次のように説明した。
「3nmプロセスに対する顧客の需要はわが社の生産能力を超えており、生産ラインは2023年末までフル稼働が続く予定だ。2023年の売上高に占める比率は(生産能力が限られるため)1桁台の半ばを見込んでいる」
(財新記者: 翟少輝)
※原文の配信は4月20日
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