アメリカ、オランダ、日本の3カ国の政府が、先端半導体技術の対中輸出規制の強化で足並みを揃えることに合意した。
3カ国の政府間交渉の妥結を伝えた西側メディアの報道について、財新記者はオランダの半導体製造装置大手のASMLにコメントを求めた。すると同社は、1月29日付の回答書で「先進的なプロセス技術を用いた半導体チップの製造技術(の対中輸出規制)に関して、数カ国の政府が合意に至ったことを承知している」と明言した。
ASMLは、シリコンウェハー上に微細な電子回路を焼き付ける露光システムの世界最大手だ。同社の回答書によれば、3カ国の合意の対象には露光システムだけでなく、その他の半導体製造装置の一部も含まれている。なお、同社は合意発効の時期について、「規制の具体的な内容を詰めたうえで法制化する必要があり、一定の時間がかかる」との見方を示した。
財新記者の取材に応じた中国およびアメリカの半導体業界関係者も、アメリカ、オランダ、日本の政府間合意は事実だと証言した。だが、3カ国の政府は合意の内容について明らかにしていない。どの製造装置にどんな影響が及ぶのか、世界の半導体業界は気を揉んでいる。
中国の国産化率は10%未満
アメリカ政府は数年前から、中国企業による先端半導体の製造技術習得を繰り返し阻もうとしてきた。2018年には、ASML製のEUV(極端紫外線)露光システムの対中輸出を禁止するようオランダ政府に要請。同システムは回線幅7nm(ナノメートル)以下の先端プロセス技術に欠かせない装置であり、現時点ではASMLが世界唯一のサプライヤーだ。
EUV露光システムの入手が事実上不可能になると、中国の半導体メーカーは1世代前のDUV(深紫外線)露光システムを用いたプロセス技術の改良により、14nmまたはそれ以下の微細加工の実現を目指してきた。それに対応できる装置のサプライヤーは、ASMLと日本のニコンの2社だけだ。
そんななか、アメリカ政府は2022年10月に先端半導体技術の対中輸出規制を大幅に強化し、自国の製造装置メーカーに厳しい制約を課した。そのうえでアメリカ政府は、オランダ政府と日本政府が同様の対中輸出規制を法制化するよう、両国への働きかけを強めていた。
世界の半導体業界では製造工程の細分化・専門化が進んでおり、なかでも前工程では各段階の製造装置が米欧日の大手メーカーの独占状態になっている。露光システムのASML以外にも、例えばエッチング装置ではアメリカのラムリサーチ、アプライド・マテリアルズ、日本の東京エレクトロンの3社が世界市場の9割を握る。
中国の半導体製造装置メーカーの技術力は、まだ米欧日の大手と互角に競える水準には至っていない。そのため中国の半導体メーカーでは、前工程の製造装置の国産化率が10%未満にとどまっている。
(財新記者: 劉沛林、杜知航、屈運栩)
※原文の配信は1月29日
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