アメリカのGPU(画像処理プロセッサー)大手のエヌビディアが、中国の顧客向けに専用開発した高性能GPU「A800」の生産を2022年9月末までに開始していたことがわかった。11月10日、財新記者の取材に対して同社が事実を認めた。
A800の狙いは、アメリカ政府による先端半導体技術の対中輸出規制強化に対応することにある。規制をクリアするための(GPUの性能を抑える)機能制限がチップに組み込まれており、プログラムの改変などでそれを解除することはできないとしている。
アメリカ商務省の産業安全保障局(BIS)は10月7日、半導体技術の対中輸出に関する新規制を打ち出し、半導体の演算能力、データ伝送速度、微細加工技術などにレッドライン(超えてはならない一線)を設定。それを超える性能の半導体や製造装置の対中輸出を原則として禁止した。
これに先立つ8月26日、エヌビディアはアメリカ政府から通知書を受領し、同社のAI(人工知能)向けGPU「A100」と、その時点ではまだ出荷が始まっていなかった次世代GPU「H100」の対中輸出を即時停止するよう求められた。さらに、エヌビディアが将来発売するGPUに関しても、A100と同等以上の性能を持つ製品は輸出禁止の対象となった。
中国の顧客離れ防止に懸命
A800はそのような背景の下で急遽開発された。エヌビディアは詳細な仕様をまだ開示していないが、半導体の販売代理会社から漏れ出た情報によれば、演算能力はA100と同等で、データ伝送速度が3分の2の400GB/s(1秒間に400ギガバイト)に抑えられている。財新記者の取材に応じたアメリカのあるGPUメーカーの社員は、この情報は「正確だ」と語った。
高性能GPUはAIのアルゴリズムのトレーニング(機械学習)に欠かせないデバイスであり、中国のデータセンターに大量導入されている。では、伝送速度が制限されたA800は中国の顧客ニーズを満たせるのだろうか。
「現時点のアプリケーションの大部分に関しては、目に見える影響は出ないだろう。伝送速度と演算能力の両面で、GPUの性能を最大限使い切る必要があるケースは極めて少ないからだ」。中国のあるサーバーメーカーの幹部は、財新記者の取材に対してそんな見方を示した。
A800のスピード投入は、エヌビディアが中国の顧客離れを防ぐための懸命の努力と見ることもできる。
同社の2022年1月期の決算報告書(訳注:エヌビディアの会計年度は2月から翌年1月末まで)によれば、中国本土向けの年間売上高は71億1100万ドル(約1兆円378億円)に上り、総売上高の4分の1超を占めている。
(財新記者:翟少輝)
※原文の配信は11月10日
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