ドイツの車載用半導体の生産ラインを買収しようとしていた中国企業が、ドイツ政府から「技術と経済の主導権を守る」との理由で認可申請を却下されたことがわかった。
この中国企業は、深圳証券取引所に上場する半導体メーカーの賽微電子(SMEI)だ。同社は11月10日、ドイツ経済・気候保護省から11月9日付の決定通知書を受け取ったと発表した。
賽微電子は、100%子会社のスウェーデン企業サイレックス・マイクロシステムズを通じて、ドイツの車載用半導体メーカーのエルモス・セミコンダクターからドイツ国内の半導体生産ラインを8450万ユーロ(約124億円)で買い取る計画だった。
サイレックスは2021年12月にエルモスとの契約に署名し、2022年1月に外国企業の直接投資に関わる許可申請をドイツ政府に提出。2022年後半の取引完了を目指していた。
しかし今回の決定により、賽微電子はエルモスの買収手続きをこれ以上進められなくなった。今後の対応について同社は、「関係先とともにドイツ政府の決定通知書を詳細に検討し、そのうえで判断する」としている。
中国の産業界に意外感
この事件は、ヨーロッパとのビジネスに携わる中国の関係者の間で意外感をもって受け止められた。というのも、今回の決定はドイツのオラフ・ショルツ首相の中国訪問の直後というタイミングだったからだ。
11月4日、ショルツ氏は(2021年12月に)ドイツ首相に就任後初めて訪中し、習近平国家主席と会談。10月に開催された中国共産党の第20回全国代表大会の閉幕後、中国を訪れた最初のヨーロッパ首脳となった。
ショルツ氏の訪中をめぐっては、ドイツ国内に反対意見もあった。だが同氏は、ドイツの大企業十数社の経営者を伴って中国詣でを敢行。このことは、両国の経済関係強化に前向きな動きだと(中国の産業界で)解釈されていた。
訪中直前の10月26日にも、中国の国有海運大手の中国遠洋海運集団(コスコ・グループ)がドイツのハンブルク港のコンテナターミナル運営会社に出資する計画が、ショルツ首相の後押しにより条件付きで認可されたばかりだった。
(財新記者:張而弛)
※原文の配信は11月10日
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