韓国の車載電池大手のLGエナジーソリューションは4月5日、中国のリチウム大手の雅化実業集団と提携し、北アフリカのモロッコで水酸化リチウムを共同生産すると発表した。
水酸化リチウムは、リチウムイオン電池の主要原料の1つだ。なお今回の発表に関して、LGエナジーソリューションは雅化実業集団との具体的な協業内容や、リチウム鉱石の調達ルートは明かしていない。一方、雅化実業集団は財新記者の取材に対し、「提携の詳細はまだ協議中」と回答した。
(訳注:雅化実業集団はアフリカのジンバブエ、ナミビア、スーダン、エチオピアなどにリチウム鉱山の採掘権益を持つ)
LGエナジーソリューションは、中国の寧徳時代新能源科技(CATL)と比亜迪(BYD)に次ぐ世界第3位の車載電池メーカーだ。韓国の市場調査会社のSNEリサーチによれば、2023年1~2月のグローバル市場シェア(車両への装着量ベース)は13.3%。同社は2021年から雅化実業集団と協力関係を築いてきた。
モロッコは電池の原料の1つであるコバルトの産出国で、2022年の生産量は世界全体の1.2%を占めた。しかしリチウムの資源量は少なく、過去に鉱山開発が行われた実績はない。
サプライチェーンの見直し不可避
にもかかわらず、LGエナジーソリューションと雅化実業集団はなぜモロッコで水酸化リチウムを生産するのか。その理由は、アメリカが自由貿易協定(FTA)を結ぶ20カ国のなかにモロッコが含まれていることにある。
2022年8月にアメリカで成立した「歳出・歳入法(インフレ抑制法)」には、アメリカの消費者がアメリカ本土で製造されたEV(電気自動車)を購入する場合、1台当たり最大7500ドル(約99万円)の税額控除を受けられる措置が盛り込まれた。
しかし、優遇措置を享受するためには、EVに搭載する車載電池の原材料の一定比率以上をアメリカ本土またはアメリカが自由貿易協定を結ぶ国から調達することが求められる。
そのため、世界の電池メーカーや電池材料メーカーが、インフレ抑制法の要件を満たすためのサプライチェーンの見直しに着手している。LGエナジーソリューションと雅化実業集団の動きも、その1つであるのは間違いない。
(財新記者:蘆羽桐)
※原文の配信は4月6日
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