中国のクラウド・コンピューティング市場の競争が激化するなか、最大手の阿里雲(アリババクラウド)が大胆な値下げに打って出た。4月26日に開催した事業パートナー向けのイベントで、主要サービスの価格を15~50%も引き下げると宣言したのだ。
アリババクラウドは同時に、「飛天無料トライアルプラン」と呼ぶキャンペーンも開始した。クラウド・アプリケーションの開発者を対象に、アリババクラウドが提供する50種類のサービスを最大3カ月間無料で試用できるというものだ。
「中国のIT普及率はアメリカに比べて大幅に低い。(企業などの)IT支出の内訳を見ても、クラウド化の進捗はアメリカに大きく後れをとっている」。アリババクラウドの親会社、阿里巴巴集団(アリババグループ)の董事会主席兼CEO(会長兼最高経営責任者)を務める張勇氏は、上述のイベントでそう述べた。
張氏は2022年12月からアリババクラウドのCEOを兼務している。大幅値下げの狙いについて張氏は、クラウドサービス利用のハードルを引き下げ、あらゆる業界の企業が使えるようにしたいとの考えを示した。
資金調達やIPOも視野に
「『強力な計算力を誰もが使えるようにする』というのが、張氏がCEO就任とともに定めた基本戦略だ。パブリック・クラウドの利用コストを企業が自前で建設するデータセンターより大幅に低くし、より多くの顧客を獲得する。それを通じて、パブリック・クラウドの規模のメリットを高めようとしている」。財新記者の取材に応じたアリババクラウドのある社員は、張氏の思惑をそう解説した。
それだけではない。今回の大幅値下げの決断には、アリババグループが2023年3月に主力事業を6分割したことも影響したとみられる。それぞれの事業グループは独立採算を求められると同時に、単独での資金調達やIPO(新規株式公開)を行う権限も与えられたからだ。
「クラウドサービス運営会社(の企業価値)は、株価収益率よりも株価に対する売上高の倍率で評価されるケースが多い。アリババクラウドが単独での資金調達やIPOを実現するには、売り上げ規模をもっと拡大しなければならない」。アリババクラウドの内情に詳しい関係者は、そうコメントした。
市場調査会社のIDCのデータによれば、2022年下半期(7~12月)の中国のIaaS (インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス) 市場において、アリババクラウドは32.6%のシェアを獲得して首位の座を維持した。
だが、2021年上半期(1~6月)の38.6%と比べるとシェアは低下しており、売上高の成長率も業界平均値を下回っている。
(財新記者:張而弛)
※原文の配信は4月26日
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