中国のフィンテック大手の螞蟻集団(アント・グループ)は1月7日、同社の主要株主の議決権に変更が生じたと発表した。その内容は、親会社の阿里巴巴集団(アリババ)の創業者として知られる馬雲(ジャック・マー)氏および馬氏と一致して行動する株主の議決権が「アント・グループの経営陣、従業員代表および馬雲氏を含む10名の個人」に移行し、おのおのが独立して権利を行使するというものだ。
この変更により、直接的・間接的または単独・共同を問わず、アント・グループには(議決権の過半数を握る)支配株主が存在しなくなった。言い換えれば、馬氏はもはやアント・グループの実質オーナーではなくなったのだ。
それだけではない。「今回の変更で、アント・グループの2023年内の上場は望めなくなった」と、複数の市場関係者は指摘する。証券取引所の上場規程には、支配株主に変更が生じた企業に対して上場までの待機期間が定められているからだ。具体的には、中国本土市場のメーンボードのA株(人民元建て株式)では3年、上海証券取引所のハイテク企業向け市場の「科創板」では2年、香港市場では1年となっている。
マー氏の議決権は約6%に低下
2年余り前の2020年8月、アント・グループは上海証券取引所と香港証券取引所に上場を申請。馬氏はその直前、アント・グループ董事長(会長に相当)の井賢棟氏ら3人の幹部とともに、議決権の行使について一致した行動を取る旨の合意書に署名していた。このスキームにより、馬氏はアント・グループの議決権の53.46%を間接的に支配可能だった。
ところが同年11月、アント・グループの上場手続きは中国の金融監督当局の指示により突如延期された。その後、同社は当局の指導に基づく全面的な業務改善プロセスを進めてきたが、今回の発表では、馬氏と3人の幹部が2023年1月7日に合意書の取り消しに署名したことが明らかになった。
アント・グループの説明によれば、同社の主要株主の持ち株比率に変更はない。筆頭株主のアリババは発行済み株式の33%を、馬氏は個人で同6.208%を保有している。つまり合意書の取り消しにより、馬氏が実質支配する議決権は53.46%から6.208%に低下した格好だ。
今回の議決権の変更に加えて、アント・グループは取締役会に5人目の社外取締役を招聘する計画だ。取締役の過半数を社外取締役にすることで、コーポレート・ガバナンスの透明性と有効性を高める。しかし現時点では、新任社外取締役の候補者名は公表されていない。
(財新記者:劉冉)
※原文の配信は1月7日
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