香港と中国本土の間の(強制隔離なしでの)往来再開を機に、中国本土からの旅行客が新型コロナウイルス用のmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンを香港の医療機関で自費接種することが可能になった。
中国の製薬大手の復星医薬集団(フォースン・ファーマ)が1月6日、同社が中国本土および香港・マカオ地区での独占販売権を持つ「復必泰(コミナティ)」の二価ワクチンを香港の民間医療機関向けに供給し、希望者は全額自己負担で接種できると発表した。
コミナティは、アメリカの製薬大手ファイザーとドイツのバイオテクノロジー企業のビオンテックが共同開発したmRNAワクチンの製品名だ。その二価ワクチンは、新型コロナウイルスの起源株およびオミクロン変異株の亜種であるBA.4、BA.5に対応し、すでに欧米諸国で広く使われている。
財新記者の取材によれば、コミナティの自費接種を受け付けている香港の医療機関は、1月上旬時点ではまだ少ない。また、自費接種にかかる費用は1回当たり1500~2000香港ドル(約2万5500円~3万4000円)と幅がある。例えば香港島のビジネス街、中環(セントラル)にある民間クリニックのラッフルズ・メディカルに問い合わせると、「接種費用は医師による問診を含めて1988香港ドル(約3万3800円)」との回答だった。
中国本土ではまだ承認されず
香港の医薬品規制当局は2022年12月、コミナティの二価ワクチンを正式に承認した。それ以前は、香港政府がワクチンを一括して調達し、香港市民を対象に無償で接種していた。しかし正式承認を経て、民間医療機関が独自にワクチンを調達できるようになり、(香港市民以外への)自費接種サービスの提供が可能になった。
一方、中国本土の規制当局は、コミナティを含むmRNAワクチンをまだ承認していない。そのため中国本土の住民は、仮に希望しても地元では接種を受けられない状況が続いている。
なお、マカオでは(香港より一足早い)2022年11月から、マカオ市民以外へのコミナティの自費接種サービスが始まっている。ただし現時点で接種できるのは、新型コロナの起源株にのみ対応したワクチンだ。
「中国本土からの旅行客のコミナティに対する関心は非常に高く、接種希望者が増え続けている。自分の職場では1日当たり(の接種者が)100人を超え、フル回転の状況だ」。マカオ科技大学医学部のワクチン接種会場のスタッフは、財新記者の取材に対してそう証言した。
(財新 駐香港記者:文思敏)
※原文の配信は1月6日
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