アメリカの製薬・ヘルスケア大手のアボット・ラボラトリーズは、中国の乳幼児用粉ミルク事業から撤退する。同社は2022年12月14日、中国市場における粉ミルクを含む乳幼児用および子供用栄養食品の販売を段階的に停止すると発表した。
アボットの声明によれば、同社はここ数年、変化の激しい中国市場で厳しい競争に直面していた。そのうえで「乳幼児・子供用栄養食品に対する消費者ニーズに変化が起きている」とし、自社製品の苦戦をにじませた。
「現在の中国の乳幼児・子供用栄養食品市場では、同業他社の多くが消費者ニーズを十分満たす製品とサービスを提供している」。アボットの広報担当者は、財新記者の取材に対してそうコメントした。
なお、アボットは一般用の栄養食品事業からは撤退せず、今後さらに力を注ぐという。また医療機器や医薬品など、中国市場で展開する他事業への影響はないとしている。
米国での「感染症事件」も影響
アボットは1988年に中国市場に参入し、2010年代から業務拡大を加速した。栄養食品事業に関しては2014年、2億3000万ドル(約314億円)を投じて浙江省嘉興市に最新鋭の工場を建設していた。
今回の撤退決断の背景には、中国市場でのシェア低下に加えて、2022年2月にアメリカで表面化した「事件」の影響もあると見られている。ミシガン州の工場で製造されたアボットの粉ミルクを摂取した4人の乳児が、クロノバクター感染症とサルモネラ感染症に罹患し、うち2人が死亡。それを受け、アメリカ食品医薬品局 (FDA)が調査を行うと発表したのだ。
このニュースは瞬く間に全世界に広がり、中国でもアボット・ブランドに対する消費者の信頼がダメージを受けた。
3カ月後の2022年5月、アボットは「FDA、アメリカ疾病予防管理センター (CDC)、そして自社による徹底調査の結果、これらの乳児の罹患にアボット製品が関係したという確かな証拠は得られなかった」と発表した。だが、中国市場での信頼回復には至らなかった格好だ。
(財新記者:孫嫣然)
※原文の配信は12月14日
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