アメリカの民泊仲介大手のエアビーアンドビー(Airbnb)は5月24日、中国の民泊施設の仲介業務を停止すると発表した。同社の中国法人である「愛彼迎中国(Airbnbチャイナ)」は、今後は(海外の民泊施設を中国本土のユーザーに仲介する)アウトバウンド事業に経営資源を集中する。
このことは、Airbnbが中国市場から事実上撤退したことを意味する。同社はその理由として、新型コロナウイルスの局地的流行が中国各地で反復し、旅行業界の発展が不安定化したことを挙げた。また、新型コロナの影響でインバウンド事業とアウトバウンド事業の相乗効果が得られない中、中国国内の事業コストの上昇が経営を圧迫したという。
Airbnbはアメリカで2008年に創業し、2020年末にナスダックへの上場を果たした。同社の決算報告書によれば、過去5年間の最終損益はずっと赤字が続いている。
また、2020年の決算報告書では中国事業のリスクに言及し、「中国市場への投資額が膨らむ一方、ユーザーや人材の獲得競争が激烈で、利益を上げるのが難しい」と説明していた。
中国の競合企業に追いつけず
要するに、もともと厳しい競争を強いられていたところへ新型コロナの打撃が重なり、(赤字事業の手仕舞いによる)コスト圧縮のために中国事業の切り捨てを決断したのが実態だろう。
Airbnbの開示情報によれば、2016年の中国市場参入後、同社が仲介した中国の民宿施設の利用客数は延べ2500万人を超える。しかし中国には「途家民宿(トゥジャー)」や「小猪民宿(シャオジュー)」など、Airbnbの参入前から民泊仲介を長年手がけてきた競合企業が数多く存在する。
財新記者の取材に応じたオンライン旅行代理業界の関係者は、Airbnbは中国市場で後発だっただけでなく、経営の現地化が遅れていたと指摘。そのうえで、同社の中国撤退について次のような見方を示した。
「民泊事業は(施設の新規開拓やオーナーとの協業など)継続的なオフライン業務が重要であり、人材(の採用や育成)への投資が欠かせない。Airbnbは上場後の資金繰りに余裕がなく、中国市場への投資が不十分だったのではないか」
(財新記者:孫嫣然)
※原文の配信は5月24日
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