中国の電子商取引(EC)最大手、阿里巴巴集団(アリババ・グループ)の傘下にあるフィンテック大手の螞蟻集団(アント・グループ)。同社はいま、金融監督当局の指導による全面的な業務改善プロセスの渦中にある。そんななか、アントの2021年7~9月期の純利益が直前の4~6月期比で約1割減少した模様であることが、財新記者の試算で明らかになった。
2022年2月24日、アリババは2021年10~12月期の決算報告書を開示した。そこには、同四半期におけるアントのアリババに対する利益貢献額が58億1100万元(約1057億円)と記載されている。持ち分法適用子会社の損益は次の四半期に親会社の財務諸表に連結されるため、アリババの持ち株比率(33%)から逆算すると、2021年7~9月期のアントの純利益は176億900万元(約3202億円)と推計される。
同様の試算に基づく比較では、2021年7~9月期の純利益は直前の4~6月期比で10.7%減、前年同期比では21.2%増となった。
なお、アリババはアメリカのニューヨーク証券取引所に上場しており、試算のベースにした決算報告書はアメリカの会計基準に準拠している。一方、非上場のアントは中国の会計基準に準拠しており、収益や費用を計上するタイミングなどが異なるケースがある。したがって、上述の分析はあくまでおおまかな試算であることに留意していただきたい。
消費者向け金融の融資残高36兆円
今回のアリババの決算開示前に取材に応じたアントの関係者は、同社の最近の四半期純利益には(投資先の企業評価額の見直しなどによる)投資評価益が含まれており、主力事業の実態を示していないと指摘した。そのため、業務改善プロセスの影響が業績に表れるのはこれからだという。
2021年11月、アントは消費者向け金融サービスの主力ブランドだった「借唄(ジエベイ)」と「花唄(フアベイ)」の事業構造を見直した。両者はアント傘下の螞蟻消費金融(アント・コンシューマー・ファイナンス)の専用ブランドとなり、オンライン決済サービスの「支付宝(アリペイ)」など親会社の業務から切り離された。そのうえで、螞蟻消費金融が銀行などの金融機関から調達した資金を原資に、消費者向けローンと物販クレジットを提供する形になった。
この発表の時点で、借唄と花唄の融資残高は合計2兆元(約36兆円)を超えていた。一方、螞蟻消費金融の設立時の資本金はわずか80億元(約1455億円)だ。金融監督当局は、消費者金融会社の融資総額を資本金の12倍以内に規制している。これをクリアするためには、螞蟻消費金融は資本を至急、大幅に増強しなければならない。しかし現時点では、アントは新たな増資計画を明らかにしていない。
(財新記者:劉冉)
※原文の配信は2月25日
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