中国のネットサービス大手の騰訊控股(テンセント)が、新興国のフィンテック企業への投資を加速している。シンガポールに本拠を置くデジタル銀行の「Tyme(タイム)」は12月7日、テンセントおよびイギリスの政府系投資機関のCDCグループから7000万ドル(約79億円)の追加投資を得て、総額1億8000万ドル(約204億円)のシリーズBの資金調達を完了したと発表した。
2012年に創業したTymeは、東南アジアやアフリカなどの新興国市場でデジタル銀行業務を展開する。人口増加率が高い新興国市場は「人口ボーナス」による高度経済成長やデジタル消費拡大への期待が大きく、中国のIT企業が海外のフィンテック企業に投資する際の重要なターゲットとなっている。
テンセントは新興国のフィンテック分野に着々と布石を打ってきた。今回投資したTymeのほか、ナイジェリアでオンライン決済を手がけるペイスタック、フィリピンの決済サービス・プロバイダーのボイジャー・イノベーションズ、インドのデジタル会計管理サービスのカタブック、同じくインドのデジタル銀行のニヨ・ソリューションズなどに出資している。
南アフリカのデジタル銀行が急成長
Tymeの特徴は、生体認証などのデジタル技術を活用し、銀行口座の開設手続きをわずか数分で完了できるようにしたことだ。ATMに似た「Tymeキオスク」という専用端末を通じて、顧客はスピーディな口座開設とデビットカードの即時発行を享受できる。
さらに同社は、モバイル決済アプリの「Tymeペイ」、全自動かつリアルタイムの審査でローンを提供する「スマート・レンディング」、顧客の資産運用をサポートする「Tymeコーチ」など、多様なプロダクトを提供している。
2019年2月、Tymeは南アフリカの大富豪のパトリス・モトセフ氏が率いるアフリカン・レインボー・キャピタルと共同で、南アフリカ初のデジタル銀行「Tymeバンク」を立ち上げた。
Tymeによれば、Tymeバンクは世界で最も速く成長しているデジタル銀行の1つであり、開業から32カ月で400万人の顧客を獲得した。同社は南アフリカでの経験を応用し、2022年7~9月期にフィリピンでもデジタル銀行を開業する計画だ。
(財新 駐シンガポール記者:楊敏、駐香港記者:文思敏)
※原文の配信は12月10日
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