AI(人工知能)を用いた画像認識技術を手がける中国の商湯科技(センスタイム)は、アメリカ政府の制裁対象に指定されたことを受け、香港証券取引所でのIPO(新規株式公開)を土壇場で延期した。
同社は12月13日、「潜在的な投資家の利益を保護するため、制裁の影響を投資家に見極めてもらえるよう、上場を延期する」と発表。先延ばしの期間については言及していないが、「できるだけ早く上場を実現できるよう力を尽くす」としている。
アメリカ政府の制裁指定は、センスタイムの上場プロセスのまさに最終段階で降りかかってきた。同社はすでに投資家からの株式購入の申し込みを受け付け済みで、計画どおりなら12月16日に最終売り出し価格を発表し、翌17日に香港市場のメインボードに上場を果たすはずだった。
ところが(アメリカ東部時間の)12月10日、アメリカ財務省の外国資産管理局が(人権侵害への荷担を理由に)センスタイムを「中国軍産複合体企業」のリストに追加し、アメリカの企業や個人による同社への投資を禁止した。その2日後、センスタイムは上場延期の決断を余儀なくされた。
1兆4700億円の企業価値を維持できるか
センスタイムに対するアメリカ政府の制裁は今回が二度目だ。2019年10月、アメリカ商務省はアメリカの安全保障や外交政策上の利益に反すると判断した企業等を列挙した「エンティティー・リスト」に28社の中国企業を追加。そのなかにセンスタイムも含まれており、同社はアメリカ由来の先端技術が使われた製品やソフトウェアなどの調達を制限された。
一方、今回の新たな制裁は同社との業務上の取引を規制するものではなく、同社の株式の購入や保有を禁止する措置だ。
センスタイムは、画像認識技術やディープラーニングの分野で中国のAI業界をリードする存在である。同社の直近の企業価値は130億ドル(約1兆4738億円)に上ると見積もられていた。
ただ投資家の間では、ここに来てAI関連企業の評価を見直す動きも出てきている。センスタイムを含むAIスタートアップのほとんどが、確固とした収益モデルや黒字化の時期の見通しを示せていないためだ。財新記者の取材に応じた複数の市場関係者は、異口同音に次のように語った。
「AIスタートアップの企業価値は過大評価されている。決算書からは業績改善の道筋が見えず、ビジネスモデルもスケール拡大の余地が小さい」
(訳注:センスタイムは12月20日から上場手続きを再開した。さらなる波乱がなければ12月30日に上場する予定だ)
(財新記者:何書静)
※原文の配信は12月13日
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