中国のEC(電子商取引)大手、京東集団(JDドットコム)のフィンテック子会社である京東数字科技控股(京東数科)が上海証券取引所のハイテク企業向け新市場「科創板」へのIPO(新規株式公開)申請を取り下げたことがわかった。4月2日、上海証券取引所が京東数科の上場審査終了を発表したことから明らかになった。
京東数科のIPO申請は、2020年9月11日に上海証券取引所に受理された。当初は2020年末までの上場を目指しており、企業価値は2000億元(約3兆3694億円)に上ると見積もられていた。ところがその後の上場審査が長引き、IPOの実現時期が不透明になっていた。
このため、京東数科のIPO撤回は多くの業界市場関係者の予想どおりだった。昨年11月3日、阿里巴巴(アリババ)のフィンテック金融子会社である螞蟻集団(アント・グループ)のIPOが突如延期されて以降、金融監督当局はフィンテック企業に対する監督管理の抜本的な見直しを進めている。フィンテックに関する事業はすべて当局の監督管理の対象となり、アントの競合企業の上場についても審査が全面的に見直されることとなった。
「京東数科のビジネスの中心は消費者向け金融からデジタルテクノロジーに移行しつつある。以前の新規上場の申請資料は現在のビジネスとずれが生じており、引き続きIPOを目指すのであれば、再申請が必要になるのは当然だ」。ある投資銀行関係者はそう話す。
当局の監督管理はますます厳しくなる
京東数科が昨年開示したIPOの目論見書によると、当時は売上高の大部分を金融事業が稼ぎ、なかでも消費者向け小口ローン事業が4割以上を占めていた。
財新記者が関係者などから得た情報によれば、IPOの審査が滞っていた時期も、京東数科は申請撤回を避けるための試行錯誤を重ねていた。2020年12月30日には親会社の京東集団が同社グループ内のクラウドやAI関連のビジネスを京東数科に統合すると発表した。
その目的は、京東数科の全事業に占めるデジタルテクノロジーの比率を増やすことで、金融事業の比率を下げることにあった。(訳注:1月11日、京東集団は同社のAI、クラウドビジネス部門と京東数科の技術サービス部門を統合した新会社「京東科技子集団」を設立したと発表した)
だが結局、事業構成の組み換えだけでは当局の理解は得られず、IPOは難しいと判断した模様だ。2020年11月2日、中国銀行保険監督管理委員会(CBIRC)と中国人民銀行(中央銀行)は、オンライン小口ローンの規制案を発表し、パブリックコメントを募っている。その意図は、京東数科やアントなどのフィンテック企業を当局がより厳しく監督管理し、事業規模の拡大を抑え、リスクをコントロールすることにある。
(財新記者:劉彩萍)
※原文の配信は4月2日
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