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歌手aikoが語る「私が恋愛の曲を作り続ける理由」 「人生は坂道だけど笑いながら登りたい」(後編)

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  • 芳麗 コラムニスト
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最新アルバム『今の二人をお互いが見てる』より

たとえば、新作『今の二人をお互いが見てる』は、タイトルからして何とも哲学的だ。

「このタイトルは、ふと浮かんだものです。最初は『今の二人をお互いが見てる。そんな二人を月が見てる』というフレーズが浮かんだんです。自分でも実はあんまり意味はわからないんですけど……。恋愛中って、理性を失っている自分もいるけど、一人で冷静になると“そばにいなくても、心でつながっている”と思える自分もいる。いつも主観と客観の両方が自分にあるし、相手もきっと同じですよね。そんなふうに思っているから出てきたフレーズじゃないかなと思います」

曲作りは「自分が自分でいいんだと思える行為」

aikoの楽曲の中には、恋愛を通して、自己と対話しているように感じられるものも多い。たとえば、新作のラストを飾る『玄関のあとで』。この曲は、玄関に脱ぎ散らかされた靴を眺めていたら浮かんだという。暮らしをともにする人への想いが綴られているような歌詞だが、どこか、aikoがaiko自身に向けて優しく語りかけているようにも聴こえる。

<知らない事だらけだけど/どこかで安心しているんだ/だけど君はいつもどこかで/ずっとずっと不安でいたんだよね>

「この曲はまさにそんな感じです。相手に、私のことをこんなふうに見つめて思ってほしいなっていう願望が出ているのかなと。自己内省的? そうかもしれません。

歌詞を書くときは、だいたい一番は感覚的なひらめきで書き始めるんですけど、2番を書くときは自分と対話しています。1番で出てきた言葉について、これってどういう意味? 自分は何を感じて、この言葉が浮かんだんだろうと問いかけると、さらに心の底の思いが出てきて言葉になる。私にとって曲を作るって、自分が自分でいいんだと思える大切な行為なので、心の奥を丁寧に扱いたいと思うんです」

愛は相手のため、恋は自分のためとよく言うけれど――。

aikoの楽曲もaiko自身も、いつだって恋に一途で重いエネルギーを注いでいるものの、その恋に溺れているようには感じられない。全身全霊で恋愛に向き合いながらも、最終的には孤独を突き詰めて、音楽に還元している。

それができるのは、結局は、恋愛よりも、自分が自分であることや音楽がいちばん大事な人だからではないかと、そう仮説を立てて彼女に投げかけてみる。

「恋愛も音楽に付随するもの? 昔付き合っていた人にも言われたことがあります。『歌詞であんなに好きっていうけど、実際は言わないよね』って(笑)。でも、自分ではよくわからないです。

ただ、わかっているのは、性別が女であることと同じくらい、私の中で音楽をやっていること、歌手であることは揺るぎないことなんやなって思います」

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【「コロナ禍は本当につらかった」】

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