インプットは必要ない。生きている限り曲が生まれる
3月末、2年ぶりの新アルバム『今の二人をお互いが見てる』を発売したaiko。
長年のスタッフとの別れ、結婚など、ここ数年で起きたいくつもの大きな変化を経て生まれた新しい作品は、多彩で濃密な全13曲。新鮮さと成熟を感じさせながらも、根っこの音楽性に大きな変化はなく、恋愛の歌が主軸にある。
年齢と経験を重ねても、ラブソングを極め続け、世代を問わずに聴き手を魅了できるのも、彼女の稀有なアーティスト性によるものだ。
「今も恋愛の曲を書き続けているのは、相変わらずエロいこと、恋愛のことばっかり考えているからです(笑)」
冗談めかした口調で語る。
aikoは、いつも自分の恋愛を歌ってきた。恋愛を通して味わった感情、気づいた真理、人生の醍醐味。小説でいうところの、私小説家タイプである。
「そうですね。それを続けているって、我が強いのかなって思います(笑)。でも自分のことを書いているから、私の場合、楽曲を作るためにインプットする必要はなくて、日々、生きていると曲が生まれる感じです。ご飯を食べる、眠る、何かを感じる、歌が浮かぶ。だから、生きている限りは新しい音楽が作れるし、歌い続けられたらいいなと思います」
aikoの歌詞には、優れた恋愛小説のような豊かな情景描写やストーリーがある。それは、一部では、aiko文学とも呼ばれるほど、聴き手の想像力を刺激するものだ。
恋愛の鮮烈にして複雑な感情や関係性を繊細に描きながらも、人生の苦味や不可解さまでも思考させてくれるような。
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