歌手aikoが語る「私が恋愛の曲を作り続ける理由」 「人生は坂道だけど笑いながら登りたい」(後編)

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「コロナ禍は本当につらかったですね。ライヴは私にとって全てと言えるほど大切なものだから、それが思うようにできないのもつらかったですし。やっとライヴができるような状況になった時、しばらく喉を使っていなかったから、なかなか調子も出なくて。しかも、一度、喉をダメにした時も、20代の頃に比べて回復が遅かったんですよ。すごく落ち込みました。

でも、そんな時も周囲の人に支えてもらいました。いつも不安が消えない私に、『大丈夫』って声をかけて背中を押してくれる。根拠はなくても、この人たちに大丈夫って言ってもらえたら、また笑って前に進める気がしました」

アルバムで、1つの作品として聴いてほしい

自分の道を一途にまっすぐに歩き続けていても、時代とともに社会は大きく変わった。身近な環境のみならず、音楽業界やメディア全体も大きく変化している。

CDよりも配信が売れる、音楽番組よりもTikTokから曲がブレイクする……etc

aikoは、音楽業界におけるそんなあまたの変化をどう感じているのだろう?

ドラマ『君は放課後インソムニア』の主題歌にもなった、aikoさんの新曲「いつ逢えたら」より

「コロナ禍を経て思ったのは、これからも時代は変わり続けるし、予想もできないことが起こるんだろうなということ。ただ、何がどうなろうとも、CDは出し続けたい。配信で曲を知ってもらえるのも嬉しいけど、やっぱり1曲だけじゃなくて、アルバムで聴いてほしいです。アルバムを1つの作品として、楽曲の並び順はもちろん、曲間の秒数までも意味を込めて作っているから。そこも含めて楽しんでほしい。そこは諦めませんけど、一方、変化に順応もしなきゃなとは思ってます」

周囲にいる20代のスタッフに話を聞いたり、これまで挑戦したことのないイベントに出演してみたり。大事なものを届けるための新しいチャレンジは、常に必要だと考えている。

「ただ、今は、いろんな情報とか楽しみが手軽に手に入りすぎて、追究する心とか、想像力が減ってる気がして、寂しいですよね。だから、ヒット曲が入れ替わる速度も速いし、すぐに忘れられちゃうのかなって。私はファンになってくれた人やコンサートに来てくれた人には、私のことをいっぱい考えてほしいし、忘れないでほしい。コンサートのMCでも、『今日は帰っても他のアーティストに浮気すんなよ! 私の曲だけ聴いてな』って言います(笑)。自分の想いとか念が強いから、相手にもそれを要求しちゃう」

恋人もファンも、そこは変わらないのだという。

「かなり重ためやけど、軽すぎるより面白いかなって。みんなももっと妄想とかして、思いとか念を強めていったほうが楽しいですよ。若い世代の子とか、みんな良い子で頑張っているけど、もっと悪い子でいいのになって。私が20代の頃なんてもっと悶々としてたから(笑)。そのほうが後々、すごく面白い関係や出来事や感情に出会えると思うけどなぁ」

次ページ一途でなければ、味わえない感情や到達できない場所がある
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