ジャニーズ事務所が"企業として"果たすべき責任 ジャニー喜多川氏の「負の遺産」にどう向き合うべきか
すでに複数の識者が指摘していることだが、調査は、第三者委員会を設立して、企業の圧力も忖度もない状況で行われることが不可欠だ。
問題となるのが、1と2がトレードオフの関係、つまりは両立させることが難しい点である。成功しているタレントほど、事実を話したくはないであろうし、事実を話すリスクは大きくなる。成功していなくても、過去を掘り返されることを望まない被害者も少なからずいるだろう。
プライバシーと人権はしっかり守る形で、調査を行う必要がある(だからこそ、第三者組織が必要になる)。
3(経営責任の明確化)に関して、ジャニー喜多川氏一人に責任を負わせて幕引きを図れるかというと、そうはいかないだろう。
性加害行為があったことを社内の誰も知らなかったのか?
誰も問題行為を止めることができなかったのか?
といった疑問は拭えないし、その点について、現経営陣の責任が追及されることになるだろう。
加えて、ジャニー喜多川氏の名前を冠した「ジャニーズ」という名称と栄光がこれからも存続し続けることができるのかという問題がある。
1~3までを乗り切ったとしても、あるいは乗り切ったがゆえに生じてくるのが4の問題(企業としての求心力と収益性の維持)である。
ジャニー喜多川氏は、死去した後も大きな影響力を及ぼし続けてきた。実際、テレビ番組では、所属タレントたちなどが「ジャニーさんの思い出」をよく懐かしそうに語っている。滝沢歌舞伎の舞台では「Eternal Producer」として、ジャニー喜多川氏の名前が輝かしくクレジットされていたりもした。
芸能の世界においては、カリスマ性のあるプロデューサー、クリエイターへの権力集中が成功をもたらすことも多いが、まさにジャニーズはその典型だろう。
ジャニーズ事務所や所属タレント、あるいはのちに退所したタレントであっても、「ジャニーイズム」を継承することで、現在も成功を維持することができているともいえる。
ジャニー喜多川氏の呪縛から解放されることは、同時に彼の「威光」を失うことも意味する。そうした状況で、事務所がいかなる求心力を維持しうるかは、未知数といっていい。
性加害問題がなくても、ジャニーズ事務所は有名タレントの相次ぐ退所や、それに伴うファンの分裂や離反など、多くの問題を抱えていたが、これからは、さらに多くの大きな苦難に直面せざるを得なくなるだろう。
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