パワハラ対策に助成金「社会保険労務士」は忙しい 働き方改革で需要大、合格者の4割近くが女性に

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ちなみに社労士の合格基準は相対的なため、多くの受験生が得点できない問題は落としてもさほど影響がない。が、過半数の受験生が得点した問題を落としてしまうと、かなりのダメージになる。過去問を繰り返し解いて、問題への対応力を鍛えておくこと。過去問を解いた後にテキストを読み返し、また過去問を解くという方法で、インプットとアウトプットを交互に行いたいところだ。

最新の法改正の出題が多いのにも気をつけなければならない。働き方改革の影響を受けて、雇用保険法や年金関連は毎年のように改正される。加えて最新の統計や各省庁の白書からの出題もある。

「これらの情報をすべて1人でチェックするのは現実的でないが、資格予備校で法改正や白書対策の講座を受けたり、受験雑誌を読んだりすればカバーできる。むしろ予習しやすい」(澤井氏)。

特定社会保険労務士なら交渉代理もできる

社労士に対するニーズはますます高まっている。その象徴は2020年からのコロナ禍における“雇用調整助成金(雇調金)の申請代行バブル”だ。すでにバブルは落ち着いたが、今後はクラウド型のソフトなどを駆使して申請の電子化を提案できる、DX(デジタルトランスフォーメーション)人材が求められている。

申請業務は複雑なものも多く、とくに助成金や給与計算については、正確で効率的な方法を提案できない社労士は競争力を失うからだ。

2007年には個別労働紛争の代理人として認められた「特定社会保険労務士」が誕生。社労士資格を持って特別研修を修了すれば、ADR(裁判外紛争解決手続き)の専門家として交渉代理ができ、裁判ではないから最短1日で和解が成立する。労務トラブルに悩む事業者や不当な扱いを受ける労働者からの引き合いは強い。

そして何といっても近年になって注目されているのは、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントの対策だ。

2020年6月からは労働施策総合推進法の改正で職場でのパワハラ対策が大企業で義務化された(中小は2022年4月から)。すでに2006年には男女雇用機会均等法の改正により、セクハラ対策が事業主の配慮義務から措置義務になった。職場の新しいルールに対応しアドバイスするのは社労士が適している。前述したように社労士試験の合格者に占める女性の比率は約4割。「資格を得たことで自分に自信が持てた」と人事総務スキルアップ検定協会の高野理絵氏は語る。

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