動揺する国際安全保障秩序の再建に必要なこと アメリカを核とする同盟の信頼回復と拡張

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岸田文雄首相のキーウ訪問は、中国の習近平主席のモスクワ訪問と重なったことで、「ウクライナを支援する西側民主主義国の連合」と「中ロを軸とする権威主義体制の連合」に世界が二分化されている印象を与えた(写真::Ukrainian Presidential Press Office/UPI/アフロ)

【特集・G7サミットでのウクライナ支援(第6回)】

ロシアによるウクライナ侵略という激震によって、既存の国際安全保障秩序は大きく動揺している。

中国の習近平主席のモスクワ訪問と岸田文雄首相のキーウ訪問が重なり、同日(3月21日)に行われた2つの首脳会談は、「中ロを軸とする権威主義体制の連合」と「ウクライナを支援する西側民主主義国の連合」に世界が二分化するイメージを鮮明にした。世界がこのように二分するかどうかは流動的だが、フィンランドのNATO(北大西洋条約機構)加盟をトルコが批准し確定する一方で、中ロ首脳会談を受けた中国国防省は「お互いの軍事的な信頼をさらに深める」と強調した。

国連安保理は、常任理事国たるロシアが侵略当事者となったことで、国際安全保障秩序の守護者としての正統性を大きく損なった。アンカーを失い動揺する中、ウクライナ戦争後の世界は安全保障秩序を形成する最も明確な国家関係である軍事同盟を中心に再編されようとしている。中ロの力による現状変更に対抗するためには、アメリカが主導する軍事同盟の信頼回復と拡張強化を図り、国際秩序の支柱とする必要がある。

結束し、拡大するNATO

スティーヴン・ウォルトの「脅威均衡論」によれば、諸国家は最強の国家ではなく最大の脅威に対抗するために同盟を形成する。冷戦終結直後から、多くの東欧諸国はいつかロシアは再び攻撃的な意図を抱き脅威となると考え、NATO加盟を希望した。1999年のチェコ、ハンガリー、ポーランド以降、2020年の北マケドニアまで14カ国が新たに加盟し、フィンランドの加盟によってNATO参加国は31となる。スウェーデンの加盟はトルコとハンガリーが反対しているものの、早晩、加盟への道は開かれるだろう。

フィンランドはロシアと1340キロの国境を接しており、NATOとロシアが接する国境は2倍となる。スウェーデンが加盟すれば、バルト海はNATOに包囲されることとなる。ロシアはNATOの東方拡大の脅威をウクライナ侵略の原因の一つと主張しているが、侵略によってNATOの結束を強固にし、長年の中立政策を転換した2カ国の加盟によって更に拡大するという皮肉な結果を招いた。トランプ前大統領の同盟軽視で結束が乱れ、マクロン大統領が「脳死」状態と批判したNATOだが、ウクライナ戦争後の国際安全保障秩序を支持する柱の一つとなるであろう。

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