ロシアによる核恫喝を拒否するために必要なこと ウクライナと同じ非核国の日本のG7での役割

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プーチン大統領はベラルーシのルカシェンコ大統領とベラルーシでの戦術核配備の意向を表明(写真:代表撮影/AP/アフロ)

【特集・G7サミットでのウクライナ支援(第7回)】

ウクライナ戦争が国際秩序に与える影響は多岐にわたるが、今後最も懸念すべき論点の一つは、ロシアがいずれかの段階で核兵器を使用するリスクであろう。核保有国ロシアが非核国ウクライナを侵略したうえに、公然と核恫喝をしているという現状は、核不拡散体制に深刻な影響を及ぼしている。

これまで、米露英仏中の5大国は、非核国が核保有国と協力して自国への侵略を行う場合を例外として、核兵器不拡散条約(NPT)を締結している非核国に対しては核を使用しないとする「消極的安全保証」に関する一方的宣言を行ってきている(うち中国の宣言は例外への言及なし)。これらの宣言は、法的拘束力を有していないが、核保有国と非核国の地位を固定するというNPTが有する不平等性を和らげる意図表明である。

ロシアによるウクライナに対する核使用の威嚇には、NPT体制を支えているこの自制の信頼性を低下させる重大な意味がある。本稿では、これまでの核抑止論が必ずしも前提としてこなかった核保有国による非核国への核使用という危険に焦点を当てる。これを論じることは、非核国日本の安全保障を考えるうえでも、とりわけ不可欠な視点となるためだ。

限定核使用の可能性とその限界

ウクライナ戦争の過程で、ロシアは核使用の可能性を累次にわたって示唆してきた。ロシアでは、プーチン大統領が2022年2月、北大西洋条約機構(NATO)諸国の姿勢等を理由として抑止力部隊の警戒態勢を上げる方針を表明したほか、同年秋には、ウクライナ軍の反転攻勢を阻止するため、戦場で戦術核(非戦略核)を使用する方針について、ロシア軍内部で議論がなされた旨報道されている。

さらに、プーチン大統領は、本年3月末、アメリカが欧州に戦術核を配備していることなどに言及しつつ、ベラルーシ軍への戦術核運搬能力支援やベラルーシにおける戦術核保管施設建設の意向を示した。これらの動きをどう捉えるべきか。

ロシアによる核使用の威嚇には、反転攻勢を行うウクライナに対して向けられたものと、武器援助を通じた介入の阻止を目的としてNATO諸国に向けられたものという2つの側面がある。しかし、ロシアにとって、NATO諸国への直接の核使用は、核報復を含むNATOの参戦を招き得るものであり、第1の選択肢となるかは疑わしい。

一方、ウクライナの前線における反転攻勢がNATO諸国による武器援助の効果の発露としてロシアに受け止められていることを踏まえれば、NATO諸国に対する威嚇の意味を含め、その核攻撃がウクライナに対して行われる可能性は考慮すべきだ。

しかし、現在の状況において、ロシアが戦術核を戦場で使った場合の有効性は、それほど高いものとは言えない。

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