【連載第1回:G7広島サミットの焦点】
日本が議長国を務めるG7広島サミットは、過去数回の日本で開催されたサミットよりも格段に注目度が高い。
ロシアのウクライナ侵攻が1年を過ぎても継続され、米中対立は激しさを増し、グローバルサウスが台頭する。国際秩序が大きく変動している中でのサミットということが無意識のうちに、G7という、これまで国際秩序を形作ってきた先進諸国の役割がどう変わるのかということに関心を持たざるを得なくなっているからなのであろう。
G7議長国の役割とは
G7は国際機関でもなければ、何らかの強制力を持つ決定をする組織でもない。しかしながら、国際社会において安定した秩序を形成するために集まった先進諸国が、自らの国益と国際社会の公益を同時に実現する政策を協調して実行することを目的としている。
G7にはゲストとして複数国が招待されるが(広島サミットではインド、韓国、オーストラリアなど8カ国と国連などの国際機関)、最終コミュニケ(共同声明書)を採択するのはG7諸国(EUを含む8人の代表)である。
G7はほぼ1年をかけて事務レベルで議題が調整され、「シェルパ」と呼ばれる首席交渉官が議題の整理を行い、各国の共通点を調整して固めていく。G7首脳が集まる前に、外相会合や保健相会合といった、政策分野ごとの大臣会合があり、最終的にG7首脳が広島に集まったときには多くの議題が既に整理された状態で、最終的に詰めなければならない議題について議論する。
その中で、議長国はシェルパのレベルから議題を提案し、最終コミュニケのたたき台を作る。議論の流れを最初に設定し、方向性を決めるのが議長国の役割である。また、サミットはその設立当初から首脳間の個人的信頼関係によって成り立っており、その場の雰囲気や議題に対する熱量を決めるのも議長国の役割である。
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