日本がサミットで重要な議題として取り上げるうちの1つが経済安全保障である。今年の3月中旬に行われた日独首脳会談においては、経済安全保障が主たるテーマであり、ドイツがこれからこのテーマに取り組む上で、昨年5月に経済安全保障推進法を成立させ、欧州各国よりも先に政策的な取り組みを始めていた日本から学ぼうとする姿勢を見せていた。
日本が経済安全保障の分野において、アメリカと共にG7各国よりも一歩先駆けた取り組みをしていることは、日本が議長国としてアピールできる点であり、議論をリードできる立場にある。
とりわけ、ロシアのウクライナ侵略により、これまで安全保障上のリスクがあるロシアと経済的相互依存を深めてきたドイツをはじめとする欧州各国は、そうした地政学的リスクを抱える相手との経済的関係を深めることが自国経済に大きなストレスとなることを実感し、ロシアはもちろんのこと、将来的に敵対的関係になり得るかもしれない中国との経済関係にもリスクがあることを認識するようになった。
対中半導体輸出規制を強化
また、アメリカも中国との経済的相互依存が自国の安全保障に直結する課題であるとの理解を強めている。昨年10月に発表された、対中半導体輸出規制の強化は、成長著しい中国の半導体産業の発展が続くことで、中国の軍事的能力、とりわけ先端半導体を使った人工知能(AI)が軍事作戦の効率化や高度化を助長するという懸念があり、そうした中国の半導体製造能力に寄与している米国製品や技術の移転を停止しなければならない、という意識に基づくものであった。
この対中半導体輸出規制の強化は、自国企業だけでなく、アメリカの技術に基づく製品やソフトウェアを輸出する第三国の企業も規制することができるが、アメリカの技術に基づかない製品を輸出する日本やオランダの企業を規制することはできない。
そのため、アメリカは日蘭両国に同様の規制を導入することを求め、明示的にではないが日米蘭3カ国による半導体製造装置等の輸出管理の強化で協調することとなった。
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