動揺する国際安全保障秩序の再建に必要なこと アメリカを核とする同盟の信頼回復と拡張

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NATOの核心は集団防衛である。北大西洋条約第5条は、加盟国のどの国に対する侵略であっても加盟国全体で防衛する義務を規定する。一方、武力行使を含めた行動要領は各国の判断に委ねられている。同盟設立当初から、圧倒的な国力を持つアメリカが自動的に参戦することを欧州加盟国は切望したが、アメリカはそのような誓約を嫌い、現在の条項となった。

トランプ前大統領はこのような欧州諸国のアメリカ依存を不公平と批判し、NATO基準のGDP比2%の防衛費負担を要求したが、欧州の反応は鈍かった。ロシアの侵略を受け、ドイツを筆頭に加盟国は防衛費増額やウクライナへの武器提供など、積極的な役割を担う方針に転換した。一方で、トルコのエルドアン大統領やハンガリーのオルバン首相は、侵略後もロシアやプーチン大統領を擁護する姿勢を示し、政治的な不協和音がある。トルコはロシア製S-400防空ミサイルの導入によってアメリカのF-35プログラムから排除されており、軍の共同運用にも影響している。

ロシアの脅威を前に、どのようにこの不協和音を打ち消し、集団防衛の紐帯を維持強化していけるかが問われており、アメリカのみならず加盟国すべての努力と協調が必要だ。マクロン仏大統領の訪中に象徴される通り、その行方はインド太平洋の安全保障にも大きな影響を持とう。

中国とロシアの軍事同盟?

3月21日の中ロ首脳会談後の共同声明は、「両国関係は歴史上最高のレベルに達し、着実に成長している」として両国の緊密な関係を誇示した。また、台湾をめぐる情勢などを念頭に「両国は冷戦思考に基づくアメリカのインド太平洋戦略がこの地域の平和と安定に及ぼす負の影響に留意する」と指摘するなどアメリカ主導の世界秩序に反発し、対アメリカでの結束を鮮明にした。

国際政治学者のグラハム・アリソンは、“Xi and Putin Have the Most Consequential Undeclared Alliance in the World”と題する論考で、両首脳の強固な個人的信頼関係に基づく「軍事同盟に等しい機能」は、ワシントンの現在の公式な同盟よりも重要になると主張している。

確かに、近年の中ロは共同軍事演習や爆撃機の共同巡回飛行など軍事的な連携を強めているが、首脳会談でもロシアが熱望する中国からの武器弾薬提供には踏み込んでいない。習近平主席は、プーチン大統領を擁護しつつも慎重にアメリカの虎の尾を踏まないよう配慮している。中ロの実質的な軍事同盟化の一線は殺傷兵器の提供であり、西側は習近平主席にその線を超えさせないことが重要だ。

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