それでもヒラリーが大統領になれない理由 圧倒的優位にみえるが、そうではない

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だがこれも、2008年選挙でのイラク問題(上院議員時代にイラク戦争開戦決議に賛成票を投じた件を非難された)に比べれば大したことはない。この時ですら、クリントンは代議員の48%の票を獲得した。今回出馬の可能性がある人々よりもはるかに強敵を相手にしていたにも関わらず、だ。

たとえ弱点があったところで、予備選におけるクリントン優勢は揺らがないかも知れない。だが本選挙ではその弱点が命取りになる可能性もある。クリントンの支持率は国務長官在任中は60%台まで上がったが、今では40%台半ばに戻っている。

本戦は超接戦の可能性大

こうした数字からは、オバマと共和党のミット・ロムニー候補が戦った2012年の大統領選など、対照的な候補が接戦を繰り広げるケースが思い浮かぶ。本選挙で誰に投票するかという世論調査では、クリントンに投票すると答えた人が、共和党のライバルたちよりも2ケタ多かったという結果も出ているが、本選挙はまだ先の話であり、あてにはならない。

クリントンの勝利の確率は、国内の政治状況に少なからず左右されるだろう。本選挙は19カ月も先であり、状況は大いに変わりうる。だが現在の政治環境のまま行けば、共和党が多少有利の接戦になることが予想される。

オバマ大統領の支持率は40%台半ばで、景気回復も堅調だ。つまり共和党と十分に戦える状況ではあるが、クリントンが立候補したのは民主党の3期目の大統領だ。実は大統領の所属政党が3期以上続けて政権を取るのは容易でないというデータが存在する。

もし本選挙でクリントンに有利な点があるとすれば、それは今日、民主党の周囲に集まっている政治勢力のおかげであり、クリントン本人の強さのおかげではない。若年層の非白人有権者の間では近年、民主党寄りの人が増えている。この層の厚みが増すにつれ、民主党にやや有利な状況が生まれている。

もっとも、民主党がこうした層を結集することができるのかについては多くの疑問もある。特にオバマにそれが可能なのか、労働者階級の白人有権者の支持率低下に耐えられるのか、低成長時代を乗りこえることができるのかーー。昨年11月の中間選挙での民主党大敗は、こうした懸念が杞憂でないことを示している。

だが世代交代や人種構成の変化によって、民主党を中心に幅広い政治勢力を結集できる可能性が出てくればどうだろう。クリントンはこれまで多くの民主党寄りの有権者(特に女性)から強い支持を引き出してきた人物であり、力を集める核となるには好位置に立っていると言えるかも知れない。

(執筆:Nate Cohn記者、翻訳:村井裕美)

(c) 2015 New York Times News Service
 

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