パトリック・クローニン(Patrick M. Cronin)博士は、新アメリカ安全保障センター (CNAS) アジア太平洋安全保障プログラムの上級顧問兼専務理事を務めている。それ以前、クローニン博士は米国ナショナル・ディフェンス大学の国家戦略研究機関 (INSS) の専務理事を務め、そこでは中国軍事問題研究センターを同時に率いていた。
同氏は、アジア太平洋地域における安全保障とアメリカ国防・外交・開発方針の両方について豊富な知識と経歴を持っている。また現在も、大きな影響力を持っている。
そこで、米国の通商戦略からみた、日本との関係の行方について、環太平洋経済提携協定(TPP)、アジアインフラ投資銀行(AIIB)などの懸案に焦点を当て、その見解を聞いた。前編はTPPについて、4月12日公開の後編では主にAIIBについて聞く。
米国の市場支配力を示せ
──米国議会は現在、TPPについて議論している。あなたは、議会に対し、「TPPは米国の安全保障にとって重要であり、TPPこそが地域において軍事面のみでの大国にすぎないというイメージを刷新する」と主張している。
現在のアジア太平洋地域において、圧倒的に重要なことは貿易と経済だ。かつての米国は、この地域において唯一の経済大国、貿易大国だったが、今ではその地位は後退している。
そこから巻き返すために、米国はTPPを構想した。私が米国の政策立案者に主張したいのは、米国が市場支配力を持っていること、また米国が、貿易に対する、さらにいえばグローバル・コモンズに対する自由なアクセスに注意を払っていることを、この地域に再認識させることが重要ということだ。
もしTPPが妥結しなければ、米国のアジア太平洋地域における支配力が揺らぎ、次期政権にも悪影響を及ぼす。次期政権が、この地域と議会から支持を得られる新しいイニシアティブを確立しようとすれば、膨大な時間が必要となるだろう。
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