安倍首相の農協改革を過小評価するな

「安倍VS農協」は「痛み分け」ではない

厳しい表情で外国人記者クラブでの記者会見に応じるJA全中の万歳会長(中央、写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

第一弾の「安倍首相の『本気』に屈した『農協』」で触れた通り、安倍首相がかかわる農協改革は、全国農業協同組合中央会(全中)の強い抵抗にも屈せず、どうにか改革の断行に漕ぎ着けた。

だが、思惑通りの決着かといえば、「痛み分け」という見方が圧倒的だ。では、本当のところはどうなのだろうか。

元々、アベノミクス第三の矢の目玉として農協改革を挙げた時点で、自民党内から反対の声が上がった。農協は長年にわたり政府自民党と農業政策を積み上げてきた、「切っても切れない関係」がある。選挙ともなれば集票マシンとして自民党議員の手足となってきた支持団体だ。組織票を持つ農協を解体することは、自民党議員にとって自殺行為でもある。

誤算だった佐賀知事選挙

だが、安倍首相にとってみれば、アベノミクスの成否が首相自身の生命線でもあり、それが農業再生にかかっているのだから、背に腹は代えられない。安倍首相は、自民党の大票田ということは百も承知の上で、農協改革に切り込んだのだ。

ところが、年が明けて農業改革の議論がヤマ場を迎えたちょうどその頃、知ってのとおり、佐賀県知事選挙を迎える。昨年末の衆院選に古川康前知事が出馬したが、この古川氏の辞職に伴う選挙だ。

ここで、安倍首相は、同県の玄海原発の再稼働に積極的で、オスプレイの飛行訓練も受け入れるという前武雄市長の樋渡(ひわたし)啓祐氏を担いだ。だが、結果は総務省官僚出身の山口祥義(よしのり)氏に敗れてしまう。

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