絶好調の「伊勢丹新宿店」を支える顧客たちの正体 22年度の売上高がバブルの最盛期越える公算

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また、コロナ禍の超富裕層、富裕層の高額品消費は、通常なら海外旅行や飲食にかけていたぶんが回ってきたという側面もあり、海外渡航制限がなくなれば、この2年の特需を維持していくのは難しいとの見方もある。

しかし、3月、4月の東京を少し歩けばわかるように、外国人観光客がコロナ以前かそれ以上に戻ってきている。2023年2月の訪日外客数は147万人で、2019年比で43.4%減(中国は95%減)まで回復してきており、昨今の勢いを見るかぎり下期には2019年度並みの水準まで戻ってくることが予測される。さらに中国の訪日客が戻ってくれば、国内の富裕層による特需が減少したとしても十分カバーできるのではないだろうか。

国内百貨店主要5社の前年同月比の3月度売上高は、三越伊勢丹が22.9%増(2019年3月比で9.2%増)、高島屋が9.1%増(同5.7%増)、大丸松坂屋百貨店が18.0%増(同5.7%減)、そごう・西武が9.7%増(同6.2%減)、阪急阪神百貨店が20.8%増(同約6%増)となった。5社とも前年を上回っているものの、大丸松坂屋百貨店とそごう・西武は2019年比ではマイナスとなった。

各社の数字を見ると、三越伊勢丹と同様に都心の旗艦店が好調なのが分かる。三越伊勢丹は三越銀座店が39.7%増、三越日本橋本店が18.3%増で、エイチ・ツー・オー リテイリングは阪急うめだ本店が14.9%増、阪神本店は80.4%増。高島屋は新宿店が21.7%増、大阪店が15.1%増で、J.フロントリテイリングは大丸東京店が37.2%増、大丸心斎橋店が32.5%増となった。

地方百貨店の復活も不可能ではない

なかでも好調が目立つのが阪神本店。ファッションやギフト需要が好調で、大型催事の連打も奏功したという。阪急うめだ本店も好調で、①世界に通用するスペシャルコンテンツの拡充、②オンライン・オフラインの区別のない価値ある顧客体験の提供、③サステナビリティの推進――を重点課題として掲げ、劇場型百貨店を目指す同店は、“西の横綱”として伊勢丹新宿本店と同様に百貨店業界をリードする存在と言えるだろう。

一方で地方店は各社とも厳しい状況で、今後も閉店が続くことが予測される。でも、成功している都心旗艦店のノウハウを上手に活かしつつ、地方ならでは特色を加えることができれば、復活も不可能ではないと思うのだ。都心旗艦店と地方都市の百貨店の両方がうまく回り始めた時、はじめて百貨店は復活したと言えるのではないだろうか。

増田 海治郎 ファッションジャーナリスト

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ますだ かいじろう / Kaijiro Masuda

1972年埼玉県出身。神奈川大学卒業後、出版社、繊維業界紙などを経て、2013年にフリーランスのファッションジャーナリストとして独立。『GQ JAPAN』『MEN'S Precious』『LAST』『SWAG HOMMES』「毎日新聞」「FASHIONSNAP.COM」などに定期的に寄稿。年2回の海外メンズコレクション、東京コレクションの取材を欠かさず行っており、年間のファッションショーの取材本数は約250本。メンズとウィメンズの両方に精通しており、モード、クラシコ・イタリア、ストリート、アメカジ、古着までをカバーする守備範囲の広さは業界でも随一。仕事でもプライベートでも洋服に囲まれた毎日を送っている。著書に『『渋カジが、わたしを作った。』

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