「やる気のない上司」こそ出世させたほうがいい訳 自衛隊で採用される「作戦術」をチームに生かす
実際、大きな成果をあげている企業やスポーツチームはミッションコマンド型の「第三の波」で組織運営されていることが多く、作戦術の存在そのものを知らなくても、「作戦術」思考が実践できている印象を受けます。
作戦術の話を人にした際によく聞かれるのが「どうすれば全体最適は達成できるのですか?」という質問です。
もっともな疑問だとは思いますが、残念ながら「全体最適のためにはこれをすればいい」という決まったマニュアルやフォーマットはありません。ただし、「これをすればいい」はなくても「これはしないほうがいい」ならあります。
なかでも特に日本の組織にあてはまるのが、「がんばってはいけない」と「気を利かせてはいけない」です。これまで私はリーダーとしてチームビルディングをする際、フォロワー(部下)に対して「がんばるな!」「気を利かせるな!」とたびたび言ってきました。
言葉の響きが誤解を生みそうですが、これは「サボってもいい」という意味ではありません。「自分の能力の限界を超えるような仕事をしてはいけない。自分の役割以外の仕事(権限のない仕事)もしてはいけない。自分の能力と与えられた役割の範囲内でしっかりと仕事をしてくれ。その際には全体の方向性と自分の仕事とをマッチングさせよ」という意味合いです(そもそも頑張ろうとすると肩に力が入り力んでしまいパフォーマンスは低下します。リラックスこそがベストなパフォーマンスを生み出します)。
リーダーとして私がすべきことはチームの全体最適化であり、そのためにはフォロワーたちの能力と役割を十分に考慮しながら、戦略目標に到達するための戦力配分を考えなければなりません。
そうした戦力配分は微妙なバランスの上に成り立っていることが多く、がんばって能力以上の仕事をしようとして無理をしたり、気を利かせて他人がやるべき仕事にも手を出したりするフォロワーがひとりでも出てくると、全体最適が崩れてしまいかねないのです。
「全体最適達成」のための人材配置
軍事の世界では、1870~1871年の普仏戦争後、フランスに勝利してドイツ統一を果たしたプロシア軍において、モルトケ参謀長によって新たな人事施策が出されました。統一するまでの間は、出世の順番として何よりもまず「やる気のある将校」「積極的に仕事をする将校」優先でした。ところが、統一後は、「それいけどんどん」タイプでは、軍縮しなければならない軍組織の全体最適が達成できなくなります。
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