「やる気のない上司」こそ出世させたほうがいい訳 自衛隊で採用される「作戦術」をチームに生かす

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作戦術は組織のリーダーや中間管理職といったポジションの人たちだけに関係するものではありません。フォロワーにとっても、チームの一員としてチームの未来の全体最適を達成するために今どういう選択をすべきなのかを考える指針になります。

作戦術そのものはかなり専門的な軍事理論なので、企業活動やチームでの活動に直接的には取り入れられないかもしれませんが、その本質となる考え方は、チームビルディングの理論としてさまざまな分野に応用可能です。

実際、大きな成果をあげている企業やスポーツチームは、作戦術の存在そのものを知らなくても、そこには作戦術の本質的な要素に基づく考え方、言うなれば「作戦術」思考が見いだせます。

「作戦術」思考はチームを最適化させるチームビルディングの理論であると同時に、チーム内で活動する個人の自主積極性を引き出すための理論的な支柱にもなります。

「作戦術」思考で「理想のチーム」へ

純軍事的な技術である作戦術そのものはみなさんの日常生活に直接は必要ないでしょうが、そのベースになっている考え方(=「作戦術」思考)や視点は、組織運営やチームビルディング、戦略的な意思決定、自主積極性の発揮(ミッションコマンド)、リーダーシップ(立場によってはフォロワーシップ)の発揮など、さまざまな場面で役に立つはずです。

ここでは、「理想のチーム」をどのように「作戦術」思考で実現していくかについて述べていきます。「チーム」という名称がしっくりこなければ、もちろん「理想の組織」と読み替えていただいてもかまいません。「組織」は比較的所属人数が多く、「チーム」は比較的少数のイメージで使っています。

例えば企業の場合だと、会社全体は「組織」、各部署やプロジェクト的な集まりは「チーム」というニュアンスです。「作戦術」思考そのものはどちらでも有効なので、みなさんがそれぞれ置かれている立場に応じて「組織」でも「チーム」でもご自由に読み替えていただければと思います。

そもそも何をもって「理想のチーム」とするかは人それぞれでしょうが、ここでの定義は「全体最適が達成されるチーム」です。

ただ、そこにもうひとつ付け加えるなら、チームの一人ひとりが自主積極的に動けるミッションコマンド型の「第三の波」に移行しているほうがより「理想的」です。ワンマンタイプの「第一の波」や決定権が複雑な「第二の波」で全体最適化するよりも、やはり「第三の波」でそれをしたほうが、「より小さな努力でより大きな成果を生み出すことができるチーム」になれるからです。

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