「やる気のない上司」こそ出世させたほうがいい訳 自衛隊で採用される「作戦術」をチームに生かす

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そこで、出世の順番を①「やる気がなく」頭が良い将校、②「やる気がなく」頭の切れが劣る将校、③「やる気があって」頭の切れが劣る将校、最後が④「やる気があって」頭が良い将校、に切り替えたと言われています。

ここでいう「やる気がある将校」とは、ある意味、自分の欲望、例えば出世欲や名誉欲が強い人間です。特に頭が良く個人の出世欲が強い人材は、個人プレーや見せかけのパフォーマンスに走りやすく、結果まで出してしまうために、軍全体のバランスを崩してしまうとの危機感がありました。

一方、「やる気がない将校」とは自分の出世欲などよりも組織マインド(組織全体のことを優先して考える)を持つ人物のことを指していると思われます。このように、統一後には個別最適を強く推し進める人材に対する警戒感があったとともに、全体最適達成のために組織マインドのある人材を強く求めたのだと言えるでしょう。

「個別の“がんばり”」が全体最適を崩す

この話をわかりやすくするために、私がある自動車工場で研修した体験をもとにフィクションとして考えた全体最適化の事例を使って説明します。

〈自動車の製造工程における全体最適〉
乗用車の組み立て工場のベルトコンベアに沿って、各セクションが配置され、車軸、車体、タイヤ、シート、ドア、その他ミラーやハンドル等を受け持っているとする。一日の生産台数を100台とした時には、順調にベルトコンベアが動き、各セクションは順調に作業をしている。
そこへ、車体部分の組み立てを担当するセクションだけが、一日120台の製造を目指そうとして、当該セクションが担当する部品(車体のパーツ)を120台分、当日使うための専用倉庫に搬入するとどうなるか?
その倉庫の他パーツ用のスペースが車体パーツの増加分だけ狭くなるため、タイヤや座席など他のセクションの部品が必要数以下しか搬入できなくなる。つまり80台分、もしくは60台分の部品しか搬入できないかもしれない。その結果、一日に製造できる車の生産台数は、最も少ない部品数である80台もしくは60台になってしまう。

このように全体最適のシステムのなかで、個別最適を独自に進めると、全体最適は低下してしまいます。全体最適を担当する管理者(リーダー)は、製造台数目標を適切に管理することが必要であり、一日の製造台数を120台にするのであれば、部品の集積要領を変更する、例えば新たな集積場所を確保するなどの措置が必要です。

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