「やる気のない上司」こそ出世させたほうがいい訳 自衛隊で採用される「作戦術」をチームに生かす

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どうすれば「理想のチーム(組織)」をつくることができるのか。何をもって「理想のチーム」とするかは人によってさまざまだと思いますが、ここでいう「理想のチーム」とは「全体最適が達成されるチーム」のことを指します。

多くの日本人は、現場で優秀だった人(個別最適に優れた人材)がリーダーになったり、仲間と長期間苦楽をともにしたり、個々人がそれぞれ努力して精一杯力を発揮したりすれば「理想のチーム」ができると思い込んでいます。

しかし、それは誤解です。基本的にチームや組織には、それを動かすための原理・原則があります。より良いチーム・組織をつくっていくには「理論」が必要です。勘や経験に頼るだけでは、チーム・組織による全体最適はなかなか達成できません。あるいは、優秀なリーダーがチームを率いても、フォロワーが受け身的に従っているだけでは全体最適を達成するのは難しいものです。

注目される「作戦術」とは何か

近年、軍事の世界では、戦略目標(全体最適)を達成するために各戦術(個別最適)を調整する「作戦術」が注目され、米軍をはじめとする各国の軍隊で研究を進化させて、都度進化した理論の導入が進められています。「軍事」や「軍隊」と聞くと、いついかなる時も上官の命令には“滅私”で“絶対服従”しなければならない「究極のトップダウン型組織」をイメージするかもしれませんが、実はそれはひと昔前の話です。

今でも国によってはそういう“前近代的”な軍隊もありますが、先進諸国をはじめとする欧米型の近代的軍隊では、前線の兵士たちが現場の状況に応じて自主積極的に動く「ミッションコマンド」が重視されています。その核となっている理論が「作戦術」です。

戦略とは、「未来をより良いものに変えるために、今後どうするか(戦略の機能についての筆者定義)」というビジョンとその実現のための方法・手段であり、時間と多くのアセットを使用してより良い未来を実現するための方策です。

戦術は「いま起きていることにどう対応するか」に関する技術です。

作戦術は、その戦略と戦術の中間に位置し、両者の橋渡しをする役割を果たします。つまり、「今の個別最適(戦術)をどのようにコントロールすればより良い未来の全体最適(戦略目標)につなげられるか」を考えて実行するのが作戦術なのです。

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