絶好調サンリオ、「不正発覚」で浮かんだ深刻事情 株価10年ぶり高値でも組織風土の課題が露呈

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上方修正を発表したサンリオのキャラクターグッズ
大幅な上方修正を発表したサンリオ。しかしその翌日に公表された調査報告書では、根深い問題が明らかになった(撮影:今井康一)

「いちばん大事な組織風土改革の部分でまだまだ完璧でない。経営として、兜の緒を締めるべきタイミングだ」

サンリオは3月16日、2023年3月期第3四半期決算の公表と併せて、通期の業績予想を上方修正した。売上高は前期比34%増の706億円、営業利益に至っては同5倍超の129億円と、大幅な増収増益となる見込みだ。

国内外の店舗での集客や物販がコロナ禍から回復したことに加え、2020年に就任した創業者の孫・辻朋邦社長の下での構造改革効果が寄与した。市場予想を大きく上回る修正を受けて株価は急騰。4000円台前半だった発表前と比べ、足元の株価は約4割も上昇し、4月3日には6120円とおよそ10年ぶりの高値をつけた。

しかし絶好調な業績とは裏腹に、同社の中塚亘常務取締役は冒頭のように述べ、神妙な面持ちを崩さない。上方修正を発表した翌日、特別調査委員会による調査報告書を公表し、サンリオの抱える根深い問題が明らかとなったためだ。

15年以上も続いていた「恣意的操作」

サンリオは2月上旬、ライセンス事業における売り上げ計上時期の操作が発覚したことを受け、特別調査委を急きょ設置した。その調査のため、2月に予定していた第3四半期決算の発表も延期していた。

サンリオの業績推移

ライセンス事業は、主に自社キャラクターの商品化における権利の許諾・管理を行う。祖業の物販事業と比べても利益率が非常に高く、サンリオの収益柱となっている。

サンリオはキャラクターの利用を許諾した取引先から、製品の販売数量などに応じてロイヤリティーを受け取っている。この際、製品の製造・販売数量とライセンス料支払額を記した報告書を取引先から受領し、売り上げとして適時計上する手続きをとっていた。

調査報告書によれば、一部の営業担当社員が取引先に対して計算期間と報告書の記入日を空欄とするよう依頼したうえで、恣意的なタイミングで報告書を管理部門へ回し、売り上げの計上時期を操作していたとみられる。

こうした不正は類似のケースも含めて4社の取引先に対して行われ、一部の取引先との間では15年以上も前から続いていた。計上時期を操作した影響により、2016年3月期から2022年末までの累計で、売上高・営業利益ともに約1億円の過少計上となっていたという。

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