構想10年、135人のキリスト者取材した彼女の提言 「宗教2世めぐる諸問題を契機に、問い直しを」

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ちなみに、本のタイトルにもなっている「証し」とは「キリスト者が神からいただいた恵みを言葉や言動を通して人に伝えること」を意味する。本書にはこのようなキリスト教特有の用語がいくつも出てくるが、それらの説明は非常に簡潔である。

「回心、赦し、復活などは、辞書的な意味ではわかりますが、キリスト教特有の用語で語られると『どういうこと?』となりますよね。人生の中でどういう体験を回心と呼ぶのか、何をやったら復活と呼べるのか……。でも、本人たちはその用語でしか、自らの信仰を説明できません。そこで、私からの説明は必要最低限にして、できるだけ本人に語り直してもらい、読者には彼らの証言を読み進めてもらううちに、回心や復活を理解してもらおうと思いました」

国内の宗教をめぐる状況は大きく変化

本書の終章は「コロナ下の教会、そして戦争」。日本のキリスト教も新型コロナウイルス感染症の世界的流行によって状況が変わってしまった。

「大体の取材はコロナ禍に入る前には終わっていたのですが、やはり当時は教会が非常に揺れていました。かなり、影響を受けており、改めて彼らキリスト教者たちが信仰を問い直すきっかけの1つにもなったため、そこはきっちりと取材していこうと思ったんです。ただ、教会はオンライン礼拝をやっていましたが、こういった内容を取材するのに画面越しは無理ですよね。だから、緊急事態宣言の合間を縫って、可能な限り対面でお会いしました」

さらに、2016年に最相氏が取材を始めたときから歳月を経て、国内の宗教をめぐる状況は大きく変わった。それらは、決して日本のキリスト者にとって、対岸の火事ではない。

『証し 日本のキリスト者』(KADOKAWA)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

「『組織』というのは、人間の営みである以上はいかようにも歪み、道を逸れていく危険性があります。それはカルトであれ、正統といわれる教会であれ、同じでしょう。本書に登場する人の中にも、幼少期に家族に火吹き棒を投げられたという人もいれば、宙吊りにされた人もいました。こうした例はカルトか否かは関係なく、どの教団にもあったわけで、まずはそのことを認めないといけません。

教会の中には『旧統一教会やエホバの信者ではありません』とホームページに断り書きをしてあるところが多く、それは『彼らと違って自分は正しいんだ』と、主張していることになるわけですが、それは差別や排除につながりますし、本当に自分たちが清廉潔白かというと、必ずしもそうではないでしょう。昨今の宗教2世をめぐる諸問題をきっかけに、すべてのキリスト者に、今一度自分たちの歴史と未来を問い直してほしいと思っています」

宗教をめぐってあらゆる議論が取り沙汰されている今こそ、本書にまとめられた「証し」を読むことが、「信仰」というものを考え直す1つの契機となるだろう。

千駄木 雄大 編集者/ライター

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せんだぎ・ゆうだい / Yudai Sendagi

編集者/ライター。1993年、福岡県生まれ。奨学金、ジャズのほか、アルコール依存症に苦しんだ経験をもとにストロング系飲料についても執筆活動中。奨学金では識者として、「Abema Prime」に出演。編集者としては「驚異の陳列室『書肆ゲンシシャ』の奇妙なコレクション」(webムー)なども手掛ける。著書に『奨学金、借りたら人生こうなった』(扶桑社新書)。原作に『奨学金借りたら人生こうなる!?~なぜか奨学生が集まるミナミ荘~』がある。毎月、南阿佐ヶ谷トーキングボックスにて「ライターとして食っていくための会議」を開催中。

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