沢登り制覇目前にどこへ「民間捜索隊」過酷な現場 缶ビールを2本冷やしたままどこへ行ったのか

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「身近なのに恐ろしい遭難」の実話をご紹介します(写真:NISH/PIXTA)
山岳遭難という言葉から何を想像するでしょうか。標高が高かったり、起伏の険しい山の中で発生する特別な事故? いいえ、実はニュースにならないだけで、山岳遭難は身近な低山・里山でも頻繁に起きているのです。なかには命を落としてしまうケースも。
遭難が発生すると、最初に対応するのは警察や消防ですが、遭難者を見つけられないまま捜索が打ち切られることもあります。その後に家族から依頼を受けて山に入るのが、『「おかえり」と言える、その日まで 山岳遭難捜索の現場から』の著者、中村富士美さん(民間の山岳遭難捜索チームLiSS代表)です。中村さんの初めての著作となる本書から「身近なのに恐ろしい遭難」の実話を一部抜粋・再編集してお届けします。

遭難したのは、何日目?

私たちがKさんのお兄さんから捜索依頼を受けたのは、Kさんが行方不明になってから1カ月以上経った、2018年11月29日のことだった。

自宅に残された行動計画書には、2泊3日の予定がこう書かれていた。

1日目 大倉から入山し、ミズヒ沢、鍋割山、鍋割山北尾根、ユーシンロッジ
2日目 石小屋沢、ヤシロ沢
3日目 檜洞沢、西丹沢ビジターセンター
Kさんが予定していたルート図(地図作成:ジェイ・マップ)

実際に地図で見てみると、Kさんの登山計画はかなり広範囲にわたる。どこから捜索をしたらいいか……と途方に暮れかけたところ、登山の経験があるKさんのお兄さんから、捜索範囲についてご要望をもらった。

それは、「2日目の沢登り中に遭難した可能性が高い。だから、計画書にあった石小屋沢、ヤシロ沢、加えて沢登りからユーシンロッジへ戻るルートとなる同角(どうかく)尾根周辺の捜索をしてほしい」というものだった。

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