2022年10月29日夜、韓国・ソウル市の繁華街・梨泰院で発生した圧死事故で、151人が死亡した。犠牲者の多くが10代と20代であることがわかった。
ソウルの消防当局は10月30日午前9時40分時点で死亡者151人、負傷者82人(重症19人、軽症63人)と発表した。ソウル・龍山消防署のチェ・ソンボム署長は「被害者の多くが10~20代であり、性別では男性54人、女性97人」と発表した。女性の死亡者が男性の2倍近く多い。また、外国人の死亡者も19人となった。
消防当局は、重症者19人の中からさらなる犠牲者が発生する可能性があるとみている。現場での捜索はすべて終了しているが、事故原因の究明に注力されるようだ。今回の圧死事故は3年ぶりに行われた野外でのマスク着用なしでのハロウィーンだったため発生したものと推定されている。
事故現場は傾斜のある細い通り
事故の専門家は「人間が傾斜のある通りに密集して倒れた瞬間、ドミノ現象が発生して被害が大きくなる」と口をそろえた。韓国安全専門家協会のイ・ソンギュ会長は「人波だけで被害が拡大したとは思えない。人が倒れ始めると慣性の法則で倒れた瞬間、それぞれが持ちこたえない限り、事故が徐々に拡大するほかない」と指摘した。
事故現場は梨泰院のランドマークとなるホテルの後方にある幅4メートルほどの狭い通りだった。ユウォン大学警察消防行政学科のヨム・ゴンウン教授は、「事故初期の映像を見ると、人力ではとうてい解決できないものだった」と圧死事故後の救助がとても難しい状況だったことを指摘する。
通りに傾斜があることが事故の原因となった可能性がある。1人体重50キログラムとすれば、100人が集まれば5トンとなる。このうち誰かがよろけて倒れれば、ドミノ現象が続いて誰もが倒れてしまう。とくに女性の犠牲者が多かったのは、相対的に男性よりも背が低く、体重が軽かったためだと思われる。
ヨム教授はまた「圧死事故が発生した状況で、救助のためにすでに倒れている死傷者を抱き抱え移動させることさえ難しい状況だった。一番下にいる人をすぐに助けなければいけないが、その上に倒れている人たちが重なっている。であれば、上にいる人から移動させればよいのではないか、というと、それさえも事故現場ではとても難しい状況だった」と説明する。