ソウル雑踏事故で「女性の死亡者」が多かった理由 警察・消防は「密集混雑区域」と指定していた

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専門家は大規模な医療的支援を呼びかけ

大韓神経精神医学会は10月30日、「今回の惨事で死亡した方たちの遺族と知人、負傷した方たちの家族、目撃者、事故に対応した関係者など、多くの国民にとって衝撃を受けたことが予想され、大規模な精神健康支援が必要な状況だ」との声明を出した。

トラウマは事故や自然災害、暴行、疾病など自分と他人に身体や精神的に大きな衝撃を与えた事件で、極度の不安と恐怖、苦痛を与える症状をいう。被害発生後、数年後に発症することもある。とくに被害者に対する心理治療がきちんと行われなければ、トラウマから抜け出すことは難しい。

大韓神経精神医学会は「2014年のセウォル号事件や新型コロナウイルス感染症のパンデミックなどが国家的に衝撃を与えた時のように、民間の専門家の協力が必要だ。国家の災難精神健康支援システムが準備されるべきだ」とアピールした。

SNS上では、事故直後から犠牲者を非難する声や事故発生当時の残酷な映像と写真などが相次いで共有されている。大韓神経精神医学会はこのような行為が故人と被害者の名誉を毀損し、2次被害、3次被害を発生させるのはもちろん、多くの国民にとっても心理的トラウマを誘発することがあると指摘している。

同学会は「現場の映像やニュースを過度に繰り返し見るという行動も、自分の健康に悪影響を与えることがあり、自制することを勧める」という。また「オンライン上での悪質な書き込みは、遺族と現場にいた人たちのトラウマをさらに増長させ回復を妨害することになる」と指摘している。

韓国トラウマストレス学会のペク・ジョンウ会長は、「このような事故が発生すれば、本人の過ちではないにも関わらず、『なぜ防ぐことができなかったのか』といった自責の念に駆られたり、不安、怒りのような感情調節が難しい状況になる。初期に出てくるこのような反応には、心理的な応急措置が必要だ」という。また「苦痛を感じるトラウマが継続して続くようになれば、医療サービスなど各分野が連携して努力することが必要だ」と付け加えた。

一方、韓国政府は国家トラウマセンターやソウル広域センター、龍山区など自治体により梨泰院事故統合心理支援団を構成し対応に当たる計画だ。心理支援の対象者は、遺族600人と負傷者や目撃者など1000人あまりに上る。救出にあたった関係者や目撃者、知人など間接的に事故と関わった人にもトラウマが生じることがある。

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