ソウル雑踏事故で多数、「圧死」から命を守れるか 法医学の医師に聞くメカニズムと救命法

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(© 2022 Bloomberg Finance LP)

10月29日夜にソウルの繁華街、梨泰院(イテウォン)で起きた事故。10万人が押し寄せたというハロウィンのイベントで、多くの人が折り重なるように倒れ、約150人が死亡した。

これまで国内の死亡事故の検証に多数関わってきた滋賀医科大学社会医学講座教授の一杉正仁さんは、「規模からしても、これは航空機事故のレベル」と話す。

「圧死」はなぜ起きるのか

報道によると、この事故で亡くなった人たちの死因は、「圧死」が多い。圧死とは胸を圧迫されたことによる窒息をいい、専門的には “外傷性窒息”と呼ぶ。

だが、人が上に乗っただけで命を落とすことなどあるのだろうか。

「それがあるんです。私たちは日々呼吸をしていますが、そのためには胸の動きが欠かせません。その動きが外から圧迫されて止められてしまえば、息ができなくなり、窒息という状態に陥るのです」と一杉さん。こう述べたうえで、次のように説明する。

「簡単に言うと、呼吸とは、酸素の多い空気を取り込み、二酸化炭素を含む空気を吐き出すこと。その際に必要となるのが肺と、横隔膜です。横隔膜とは胸とお腹を仕切っている筋肉を言い、この横隔膜が下がって肺が広がると、陰圧がかかって外気が取り込まれ、反対に横隔膜が上がって肺が縮まると、陽圧がかかって空気が吐き出されます」

今回のように、外からの強い圧で胸が広がろうとするのを押さえつけてしまうと、肺が広がらないので呼吸をする能力が失われ、窒息死するという。

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