「大事なのは、胸を圧迫させないこと。つまり、胸を動かせるスペースを確保することです。まずは可能なら上半身を横にします。それができなければ、鎖骨の下あたりに両手のこぶしをもってきたり、バッグなどを挟ませたりして、胸と相手との間にスペースを作ります。これは仰向けの場合も、うつ伏せの場合も同様です。その際、胸にこぶしをもっていかないように。逆に呼吸ができなくなります」
呼吸をするスペースができれば、最悪の状態は防げる可能性があるそうだ。
遭遇した場合、どう救命活動をすべきか
次に、このような場面に遭遇した場合、どう救命するかも知っておきたい。今回の事件の報道をみると、多くの人が心臓マッサージを施していたが、一杉さんによると「それは正しい」という。
「呼吸停止になると、まもなく心停止します。ですので、心臓がまだ動いている段階であれば、とにかく心臓マッサージをすることが重要。今回はこの心臓マッサージで救われた命があるのではないでしょうか」
心臓マッサージ(胸骨圧迫)のやり方は日本心臓財団のホームページに書いてある。心臓マッサージなどのキーワードで検索するのもいいだろう。
「胸の真ん中に手のかかとの部分を重ねてのせ、肘を伸ばしたまま真上から強く、胸が約5cm沈むまで、押してください。圧迫を繰り返すとき、手を胸から離さないでください」
一方、電気的刺激を使ってショック療法的に元に戻す救命装置であるAED(自動体外式除細動器)は、心室細動(正常の規則的な動きを失ってしまった心臓の働き)があるときに行うと有効だという。ただ、心肺停止の時間が5分以上続くと、救命は極めて難しくなるそうだ。
今後、どういう状況で事故が起きたかなど、詳しい状況が明らかになっていくだろう。これを教訓として自分と周囲の身を守る術を身につけておきたい。
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