「父親という役目」の終わり
アメリカネバダ州。文字通り何もない、誰もいない砂漠の荒野。私は路肩にクルマを停めて息子を待っていた。砂漠の中の、永遠に続いているようにさえ見える一本道を、はるか遠くのほうから息子が歩いてきた。
その姿が、針で突いた点のような小さな影から、徐々に大きくなり形を帯びていく光景を、私はじっと見つめていた。時間にしてほんの5分足らずだっただろうか。しかしその5分は、私に、息子と過ごしたこれまでの年間を思い起こさせるには十分な時間だった。ここ最近、急に背が伸びてきた息子は、もうあと何年かで私の背を抜くことだろう。
「この後、私が立つ場所を通り過ぎて、彼の道を歩んでいってほしい」
灼熱の太陽の下、ふとそんなことを思った。
2022年夏。46歳の私は、13歳の長男と7歳の次男を連れて、旅に出た。男3人で3週間かけて、アメリカ中をキャンピングカーで巡った。
あの旅は、私にとって本当に最高の旅だった。クルマを走らせながら、「ああ、俺はこういう旅をしたかったんだ」と心の底から思える、死ぬまで忘れないような、魂が震える瞬間が何度もあった。魔法のような3週間だった。
そしてあの旅は、息子たち2人と行ったことに、とても大きな意味があったと、父である私は感じた。
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