運動、歩行、仕事後に股関節の違和感や痛みがあれば、まずアイシングをしましょう。アイスバッグや厚手のビニール(水が漏れないよう注意)に氷を入れて手ぬぐいなど薄い布で包み、横になった姿勢で股関節の痛みがある部位に当てて、伸縮包帯でくるみましょう 。皮膚に負担をかけないように、氷と一緒に水を少し入れるといいでしょう。
15~20分間ほど冷やした後、1時間ほど間を空けて皮膚の温度を戻したら、再度アイシングをしてください。皮膚が弱い方や冷たさに弱い方はアイシングの時間は10分程度でもかまいません。その日は、入浴や飲酒は血行が促進されて痛みが増しやすいので、避けるようにしてください。
股関節の痛みを予防する方法
続いて、股関痛の予防法についてお伝えします。
股関節の負担を減らすには、股関節周囲の筋肉を鍛えて関節の安定性を高めることが重要です。とくにお尻の横にある中殿筋(ちゅうでんきん)という筋肉を鍛えると、立った状態でも歩行時でも股関節が安定します。仕事や家事の合間などでも手軽にできるように、立ったままできる中殿筋のトレーニングを次ページで紹介します。
また、先ほどもお話ししましたが、左右の脚を均等に使うように訓練することも大事です。左右の体重のかけ方のバランスを整えるスクワットも次ページで紹介します。
日常生活では歩行時に、できるだけ左右に体がブレないよう真っすぐ歩くことが必要です。
そのためには歩き出す前に一度足を揃えて、つま先を正面に向け、足の外側(小指側)に体重が逃げないように、膝を締めて立ちます。そのうえで、男性は30㎝、女性は25㎝の幅の平均台の上を歩くつもりで歩いてみてください。この際、足の親指で地面を押すように意識すると、左右のブレがより少なくなります。
女性はハイヒールなど、かかとの高い靴を履く機会があると思いますが、こういった靴は体のブレを招いて、股関節の負担を増長してしまいます。股関節の負担を減らすために、かかとが低くてクッション性の高いスニーカーなどを履くように心がけましょう。
最後に股関節の病気について紹介します。
変形性股関節症という病気を聞いたことがあるかと思います。加齢に伴って骨盤(寛骨臼)と大腿骨頭が変形してくることで、股関節周囲に痛みが起こり、立ち姿勢の維持や歩行に支障をきたす疾患です。
骨盤に対して大腿骨の収まりが十分でない状態を臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)といいますが、これが変形性股関節症の最大の原因です。
関節というのは消耗品で、程度の差はあれ、誰でも加齢にともなって少しずつ変形していきます。この際、臼蓋形成不全があると立っていても歩いていても通常より股関節にかかる負担が大きくなるため、関節が早期に変形してしまうのです。
臼蓋形成不全や変形性股関節症以外でも、鼠径部(そけいぶ)付近で腸の一部が飛び出る鼠径ヘルニアや、血流不良で大腿骨頭の一部が壊死(えし)する大腿骨頭壊死症、自己免疫疾患の関節リウマチなど、さまざまな疾患が股関節痛の原因になりますので、股関節の痛みや違和感が常時あるようであれば、一度病院で検査を受けたほうがいいでしょう。
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