ただ、週刊誌で展開される論理は非合理的だ。偶然でも説明可能だからだ。昨年1~9月に、50歳未満の国民2万8613人が亡くなっている。突然死することが多い大動脈解離や脳血管疾患だけでも1892人だ。彼らが年間1~2回のワクチンを打てば、毎月20件くらい偶然の一致が起こる。
世界の議論は違う。アメリカCDCは「歴史上、最も厳格にモニターされたなか、すでに何百万人がワクチンを打っている」「コロナワクチンは有効かつ安全」と結論している。
根拠とする研究は多数存在する。1月16日にアメリカ・カイザーパーマネンテ南カリフォルニア病院の研究者が、『ワクチン』誌に発表した研究によると、7つのワクチン安全性データリンクサイトに登録されている会員データを解析したが、副反応による死亡の増加は認めず、コロナ以外の死亡率も低かったという。この研究は、アメリカの全人口の3%を対象とした大規模なもので、信頼性は高い。
なぜ、日本のメディアはワクチンのリスクをあおるのだろう。それは、売れるからだ。多くの国民がワクチンに不信感を抱いており、ワクチン批判の記事は、共感を得やすい。
日本人がワクチンを信頼しない理由
実は、日本人は世界でもっともワクチンを信頼していない国民だ。2020年9月、ロンドン大学の研究チームが世界149カ国から30万人を対象に、ワクチンの信頼度を調査した研究成果を『ランセット』誌に発表したが、日本は「世界で最もワクチンが信頼されていない国」と評された。安全性について、「信頼している」と回答した人の割合は8.9%でフランスと並び、モンゴル(8.1%)に次いで悪かった。
なぜ、日本人はワクチンを信頼しないのか。このことを考えるうえで興味深い研究がある。2020年1月、秋田大学医学部の学生だった宮地貴士氏らが『ランセット』誌に発表したもので、ヨーロッパ各国でのワクチンへの信頼度は、国家への信頼感と高度に相関していた。
多くの先進国で、ワクチン接種は国家が実施する公衆衛生政策だ。ワクチンの信頼度に、国家への信頼が影響したとしてもおかしくない。宮地氏は「日本人がワクチンを信頼しないのは、政府を信頼していないからだろう」と言う。
3月23日、アメリカ政府はホワイトハウスのコロナ対策チームを5月に解散させることを発表した。世界では、コロナパンデミックは収束に向かいつつある。日本でも、そろそろまともな議論をすべきだ。こんなやり方で済ませれば、次のパンデミックで、さらに多くの高齢者が命を落とすことになるだろう。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら