これから「防ぎようのないバブル崩壊」が長く続く 株式市場や不動産の価値は一体どうなるのか

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それは、単純なALM(資産・負債の総合管理)のミスである。短期の預金という負債を抱え、それを預金よりは満期の長い債券などで運用していた、という期間のミスマッチである。

しかし、なぜまっとうな銀行がそんな単純なミスをしたのか。それは、ミスではなく、わかっていながらやったことなのだ。なぜなら、完全なALMを行うためには、受け入れた預金をすべて現金のまま置いておくしかない。しかし、預金を全額現金のまま置いている銀行がどこにあるだろうか。

取り付けも損失も生じないが、しかし、運営コストが丸々赤字になる。破綻どころか、破産確実だ。だから、運用する。貸し付ける。そうすると、取り付けが起きると対応できない。破綻する。取り付けは起きてしまえば、逃れる道はない。即座に閉めるしか道はない。ネット取引の現代では、ネットも停止するしかない。

現実的には、起きてしまえば間に合わない。取り付けとは、何があっても避けられないのだ。だから怖いのだ。

「破綻の真犯人」は一体誰なのか

では、なぜ非合理的な取り付けが起きてしまったのか。人々は、預金を引き出そうとしたのか。それは、運用していた債券の時価が下落したことだ。

資産の棄損を恐れて、預金が引き出され、それに対応するために債券を売却して、損失が拡大し、万が一に備えて資本を増強しようとした。しかし、債券売却と資本増強のニュースはさらに取り付けを加速し、あっという間に破綻した。

なぜ債券の時価が下がったかというと、いうまでもなく、中央銀行の利上げだ。なぜ利上げしたかというと、インフレだからだ。なぜインフレになったかというと、新型コロナウイルスによる供給ショックもあったが、給付金をばらまいてバブルにしたからだ。

そして、コロナ明けでたまっていたカネと欲望が噴出して、サービス消費を中心にインフレは加速した。これに慌てて対応して、金利を急上昇させたのである。

つまり、シリコンバレーバンクの破綻の犯人は、やはりバブルなのである。しかし、リーマンショックなどと違って、バブルに踊った欲望が直接的に投機を行い、それが破綻したのではなく、バブルに対して普通に市場全体、経済全体が盛り上がったことによる必然の帰結なのである。だから、バブルという「特別な」ものではなく、「普通の」バブルが「普通に」広がって起きた、必然の帰結の銀行破綻なのである。

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