これから「防ぎようのないバブル崩壊」が長く続く 株式市場や不動産の価値は一体どうなるのか

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クレディ・スイスは、違法的かどうかはともかく、リーマンショックと同じような過度のリスクテイク、杜撰な投資を行い、それらが積み重なって破綻危機となった。長い間、危ないと言われ続けていた。だから、今回クレディ・スイスが破綻しても、誰も驚かなかった。

皆が驚いたのは、スイス政府とスイス中央銀行が救済に全力で動いたことである。自業自得であって、政府が救済する理由はないはずだが、金融システム不安が欧州、世界に広がることを何がなんでも防止するために動いたということだ。

「債券と株式の根本原則」に反する措置をとる代償

この結果、今後も大きな銀行であれば必ず政府が救済してくれるというモラルハザードが生まれた。今後、中小の金融機関が破綻したときに、「クレディ・スイスを救ったのに、もっとまっとうな金融機関を救わないとはどういうことだ」という議論になり、結局はすべての金融機関が救われることになってしまう。

さらに今回は、株主価値がゼロにはならず、一定の価値を維持した(UBS株と株式交換となった)。それにもかかわらず、「AT1債」と呼ばれる劣後債は無価値となった。

だが、この措置は、今後の金融システムの安定性に大きなリスクをもたらす。なぜなら、劣後債とはいえ、株式に劣後するというのは、債券と株式の関係の根本的な原則に反し、今後、劣後債を引き受ける投資家はいなくなってしまうからだ。

実際、劣後債による資本性資金の調達は止まるだろうし、すでに社債市場全体の価格が下落している。なにより、金融システムの安定性がリスクにさらされたときに真っ先に必要になるのが、この手の劣後債による資本増強のはずだ。これが当面の間(少なくとも現在の金融システムに対する不安が完全に払拭されるまで、つまり、現在のバブル崩壊サイクルが完全に終わるまで、実際には5年以上となるだろう)不可能になってしまう。

となると、普通株式による増資しか手段はなく、不安が台頭している中で株式増資するとなると、大幅な株価下落や株式価値の希薄化を甘受して増資することになる。これでは「最後の手段以外には」、つまり、破綻必至になってからしか実現しえなくなる。

すなわち、金融システム不安の状態ではいかなる資本増強も行えず、破綻が現実化した場合にしか資本増強は起きず、「金融システム破綻を座して待つしかない」ということになる。

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