これから「防ぎようのないバブル崩壊」が長く続く 株式市場や不動産の価値は一体どうなるのか

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競馬である。

実は3月18日の土曜日、JRA(日本中央競馬会)の厩務員や調教助手からなる3つの労働組合がストライキを行った(19日は解除。18日は組合非加入者などで対応)。今年は大手企業の「賃上げ満額回答」の見出しが躍る時期であったが、交渉は決裂し、ストライキに入ってしまった。

「真の世界一の競馬大国」になるためにすべきこと

詳細はここでは議論しきれないので、各種報道を参照してほしいが、私として言いたいことは2つある。第1は、馬が優先ということだ。いかなる理由にせよ、ストライキをするべきではないと考える。

そもそも「月曜日全休」というJRAの現在の慣行は、いろいろな対応がなされているとしても「馬は月曜日も生きている」という現実を無視している。人間の都合は2番目だ。

第2に、JRAという存在自体が既得権益であり、強力な参入障壁で守られている。その究極の領域が調教師であり、馬房数の割り当て制であり、世界では一般的な外厩(JRAの管理するトレーニングセンター以外の厩舎)を禁じていることである。

日本では、福島県のノーザンファーム天栄や滋賀県のチャンピオンヒルズなどの施設を外厩と呼んでいるが、これは外厩が禁止されているために、その規制を事実上かいくぐるための手段であり、最後はJRAトレセンの厩舎、厳格な参入規制のあるJRA調教師の馬房に入らないといけない。

世界で最も儲かる「競走馬ビジネス大国・日本」でのこの利権はとてつもなく大きい。その調教師の下にいる厩務員も、間接的にとはいえ、権益に守られ、かつ非常に恵まれたポジションである。

したがって、今回の厩務員の賃金体系改善(以前の制度への復帰)という主張は、局所的に正統性はあっても、世界的な競馬産業の中で見ると、まったく違った景色になる。

「真の世界一の競馬大国」になるためにも、JRAは厩舎の自由化を進めるべきだ。何よりも、JRAとNRA(地方競馬)の垣根を完全に取り払うべきである。「ドバイだ、凱旋門だ」と騒ぐのは、そのあとだ。

さて、週末の26日には中京競馬場で高松宮記念(G1、メインの第11レース、芝コース、距離1200メートル)が行われる。

そんな人間の駆け引きをよそに、つねに馬は全力で走る。中京なら3枠6番に入ったナランフレグ。それとメイケイエール(3枠5番)。買うならどちらかの単勝。パドック次第で決める。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

小幡 績 慶應義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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