2人でホテルを出たのだが、適当なカフェが見つからない。まさとしは、その状況に焦りが増した。隣を歩いているたかこのことはもう眼中にない様子で、「どっかに入れる店はないかなぁ」「弱ったなぁ」と、ずんずん歩いていく。
お見合いのためにオシャレをし、ハイヒールを履いていたたかこは、まさとしの歩くスピードに必死でついていったのだが、段差のあるところで転んでしまった。
「だ、大丈夫ですか」
転んだたかこを見て、まさとしはさらにあたふたしてしまったようだ。
「ストッキングは伝線してしまうし、膝からはうっすら血がにじんでいるし、ハイヒールを履いてきたことを後悔しました」
結局、転んだ場所の近くに飲み物を先に買って席につくチェーン店のカフェがあり、そこに空いている席があったので、たかこが気をきかせて言った。「私があそこのお席を確保するので、飲み物を買ってきていただけませんか?」。
お見合いを終えて、たかこがこんな連絡を入れてきた。
「想定外のことが起こると、パニックになってしまう人なんだと思いました。仕事をしていれば予期せぬ出来事って起こるし、生活をしていたら自然災害やコロナのようなパンデミックが今後も起こるかもしれない。そうしたときに、その状況に応じてうまく立ち回れる人でないと、パートナーとしては不安です。お見合いは、お断りでお願いします」
これはこの2人のケースだけでなく、お見合いではよく聞く話だ。婚活業界には、“カフェ難民”という言葉もあるくらいだ。
予約のできないティーラウンジがお見合い場所になったときには、男性は少し早めに行ってまずは席を確保し、お見合い時間になったら、待ち合わせ場所に女性を迎えに行く。そして「お席は取ってあります」と、女性を席に誘導するのが、スマートだ。
この段取りを間違えると、見合いをする前から残念な結果になる。
店選びがスマートではなく失敗
ゆうこ(34歳、仮名)はとおる(41歳、仮名)とお見合いした後、交際になった。ゆうこは、これまであまり恋愛経験がなく、婚活もしたこともない。とおるが初めて交際に進んだ男性だった。
結婚相談所では、お見合いをするときに相手に伝えるのは、名字、もしくは下の名前だけだ。フルネームがわかると、SNSで検索したときにその個人にたどり着くことがある。個人情報を保護するために設けられているルールだ。
フルネームが明かされるのは、交際が成立してから。そこで、初めて連絡先の交換となる。そして、男性から女性にファーストコール(もしくはメールによるファーストコンタクト)をするというのが通例だ。
ファーストコールを終えたゆうこから、連絡がきた。
「時間どおりにファーストコールがかかってきました。1時間弱、長話をしてしまいました。今週の土曜日に夕食に誘ってくださったので、出かけてきます。『適当なお店を見つけて予約しておきます』とおっしゃってくださいました。男性と2人だけでお食事するのは、これまでの人生の中で数えるほどしかないから、なんだか今から緊張してしまいます」
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