もちろん、金融不安に伴うシステミックリスクを放置することは、市井の人々の生活にも大きな影響を与える。
この点、声明文では最近の混乱が家計・企業にとって与信環境のタイト化をもたらし、経済活動の重しとなる可能性が指摘されている。今の混乱が与信環境のタイト化を通じて雇用・賃金情勢の鈍化を促し、インフレが抑制される期待も抱かれるため、利上げ路線にブレーキがかかる可能性は確かに想起される。
金融不安による貸し渋りがインフレ抑制?
実際、会見においてパウエルFRB議長は「銀行破綻の影響は利上げと同様の効果を持つ」と述べ、今後の政策金利の軌道に影響する可能性に言及している。
しかし、現時点では「その影響度合いは不透明(The extent of these effects is uncertain)」と明記されており、結局はインフレリスクを注視し続けるとの結論が示されている。議長会見でも銀行破綻の影響は不透明感が大きく、実体経済への影響度を予測することが困難と述べられており、今回改定されたスタッフ見通し(SEP)にもその影響が十分織り込めていないという。
スタッフ見通しでは実質GDP成長率見通しに関し、2023~2025年にかけて「0.4%→1.2%→1.9%」と2023~2024年についてそれぞれマイナス0.1%、マイナス0.4%と引き下げられているが、この予測値についてはアップサイド・ダウンサイドのいずれが大きいのかは今のところ「わからない」というのがFRBの結論である。
ちなみに、スタッフ見通しにおける個人消費支出(PCE)デフレーターはコアベースで「3.6%→2.6%→2.1%」となり、2023~2024年についてそれぞれ0.1%ずつ上方修正されている。今後2年にわたって基調的なインフレ率が2%を優に超えてくる以上、インフレリスクを重くみるべきというFRBの判断は自然である。
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