FRB、銀行破綻でも一段の「利上げ」は欠かせない 「年内にかけて利下げ」という見立ては楽観的

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シティグループ・米国チーフエコノミストのアンドリュー・ホーレンホースト氏(写真:梅谷秀司)
SVBショックとインフレ退治の板挟みにあるアメリカ経済は、この先どこに向かうのか。シティグループの米国チーフエコノミストに聞いた。

──アメリカ連邦公開市場委員会(FOMC)は3月21~22日に開催した定例会合で、政策金利を0.25ポイント引き上げることを決めました。シリコンバレー銀行(SVB)破綻による金融システムへの不安と高いインフレ圧力が交錯する中、この決定をどう受け止めていますか。

難しい状況ではあったが、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)はできる限りのことをやった。SVBが破綻する前の今から2週間前にFRBのパウエル議長は、議会証言でアメリカ経済は堅牢であり、50ベーシスポイントの利上げがあるかもしれないと語っていた。その後、SVB破綻を受けて市場関係者の間では、金融システムを安定化させるために利上げはないのではないかという見方もあったが、FRBはSVB破綻前後における予想範囲の真ん中の選択肢を取った。

FRBとしてはインフレ圧力に対応していることを示したと同時に、金融システムの不安についても無視しているわけではないというメッセージを送ることができた。25ベーシスポイントの利上げ幅は、市場にとって受け入れやすいものだった。

さらなる利上げが必要になる

――今回のFOMCを受けて政策金利の誘導目標は4.75~5.0%となりました。政策金利のターミナルレート(最終到達点)はどうなると見ていますか。

銀行危機が起こる前からターミナルレートは5.5~5.75%と予測しており、その見通しは変えていない。物価指標であるPCEデフレーターや労働需要の強さがこの先も続いていくと見ているからだ。FRBや連邦預金保険公社(FDIC)が規制として使える手段を用い、銀行セクターに対するリスクを抑え込むことに成功することが前提となる。

FRBの公表資料。2023年末の政策金利見通しについて、18人のメンバーのうち10人の予想(青丸が10個並んだ部分)が5~5.25%に集中した(編集部撮影)

アメリカ拠点のエコノミストが予測するターミナルレートのコンセンサスは5~6%であり、われわれの予測はコンセンサスの中では高い水準にある。一方でFRBのメンバーが2023年末にかけて予測する政策金利の見通し(ドットチャート=予想分布図)は50%超が5~5.25%に集中していて、残りの大部分が5.25~6%となっている。

マーケットでは年末にかけて利下げがあると見る向きもあるが、それは楽観的だ。

価格変動が激しい食品とエネルギーを除くPCEコアデフレーターは今年前半に前年比4.5%強で推移するだろう。雇用の伸びは月30万人を超え、失業率を歴史的に低い3.6%に抑え込んでいる。FRBの予測よりもインフレが進み、私たちは利下げどころかさらなる利上げが必要になるとみている。

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