金融市場は、3月10日に突如降って沸いたアメリカのテクノロジー企業への融資を担うシリコンバレーバンク(SVB)経営破綻の話題一色である。
すでに日本時間13日早朝、米財務省とFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)、そしてアメリカ連邦預金保険公社(FDIC)が共同声明において、全預金の完全保護を通じて破綻処理を完了させる方針を表明している。
声明文では「預金者が3月13日から全資金にアクセス可能になる」と言明され、アメリカの銀行部門における「取り付け騒ぎの連鎖」という事態はひとまず回避された状況にある。
「利上げの威力」+「杜撰な銀行監督」=破綻
アメリカのスタートアップ界隈の実情やSVBの財務内容に関する詳細な解説はより明るい諸賢の解説に譲るとして、マクロ経済分析の観点に照らせば、今回の事案は「利上げの威力」と「杜撰な銀行監督」が重なった結果と映る。
アメリカの基礎的経済指標が際立った失速を見せない中で「利上げの威力」を感じにくい雰囲気が充満していた。事実、SVB破綻直前までは「0.25%から0.50%への利上げ加速の可否」が最大の関心事だった。
しかし、金利市場では長短金利差の逆転(逆イールド)の大きさが日々話題となっていた。
一般論として、銀行部門は短期資金で調達して、これを貸し出しや有価証券投資といった長期運用に回すことで長短金利差を稼ぐことを基本的なビジネスモデルとしている。逆イールドの常態化は、SVBに限らず銀行部門全体のビジネスモデルが根本的に窮屈になることを意味する。
こうしたマクロ環境に加え、SVBが米西海岸シリコンバレーの中核をなす銀行だったことも事態悪化を速めたといわれる。
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